【 決戦に向けて 】
第427話 この人教師だったのか
こうして8年の時が過ぎた。
まさに光陰矢の如しだ。
今日は第21期生の召喚が予定されている。
元々20期生が即日2人帰ってしまったので、ずっと2人足りない状態だったんだよね。
それからじわじわと死者が出て、去年の段階で命を失った者は4人となってしまった。
これで残りは44人。今のペースだと、大幅に減ってからの召喚ではロスタイムが長すぎる。
だがあまり少人数を召喚しても、気心の知れた仲間がいなければすぐに帰ってしまうだろう。
誰もが縁も
そんな訳でこの6人という数をどう取るかを悩んでいたのだが、おそらくその話が何処かで流れたのだろう。
彼らは全員あの14期生。運悪く新人研修中にラーセットを襲った奴等と出会ってしまい、ほぼ全員がその戦いで死亡したグループだ。
この4人はカマキリの卵のような繭を作って難を逃れたが、そうか……遂に帰ってしまうのか。
話を受けた時は衝撃を受けたが、引き留めはしなかった。
何と言うか、もっと前から帰るタイミングを計っていた節があったからだ。
そしていざ俺のところへ来た時は、もう完全に決心は固まっていた。
こうして欠員は10人となり、誰の反対も無く召喚することになった。
これで14期生はフランソワただ一人。彼女は巻き込まれ型で、召喚された時は誰一人知り合いなどいなかった。考えてみれば、すぐに馴染めなくて帰ってしまってもおかしくはなかったんだよな。
ただ逆に手厚く保護された事や、この世界に興味を持った事もあって残ってくれた。
そして彼らの帰還に関しても、一緒に行くとは言わなかった。助かる。
まあ実際、彼らよりも
前置きが長くなってしまったが、こうして21期生10人が召喚された。
ただ今回は今までとちょっと違う感じだな。一人ちょっと大人びた感じの女子高校生か? 珍しく私服なのでよく分からない。
だけど、彼女には見覚えがある。やはり確率を考えると、召喚されてくる人間は俺が知っている人間が多少は優先されるのではないだろうか?
彼女の名前は
とは言っても、間違いなくクロノスとダークネスさんは繋がっていただろうしな。彼女もまた、
当時は真っ白い髪だったが、今見る限りでは黒い。きっと色々あったのだろう。
あの頃は足が不自由で、遠隔操作の人形を操っていた。
そう言えば、私室に入った虫が見えない力で消されていたな。
一体どんなスキル持ちなのか気になるところだ。
残りは全員、制服からして中学生か。案外彼女もそうかもしれないが、さすがに微妙に大人びているんだよな。
※ ◎ ※
そして2日後、ちょっとした驚きがあった。
「先生、どうしましょう」
「先生!」
「先生!」
「うーん、困ったわねぇ」
物凄く若く見えていたが、実際は23歳。新米とはいえ教員だった。
嘘だろ? 高校生か、もしかしたら中学3先生くらいかと思っていたぞ。
探究者の村で出会った時は、若く見えながらも長い年月を過ごした風格があった。
だけど今の彼女は本当に子どもの様に見える。実際まだ23歳なんだし、そんなものではあるが。
それよりも驚いたのは――、
「僕たち、どうしたらいいんでしょうか?」
そういった少年はこけしのようなおかっぱ頭にまっさらな制服。おそらく1年生だろう。
まだ声変わりもしていない。
身長も140センチほどしかなく、小学生と言われても余裕で通用するな。
だが彼の名は
忘れもしないあの容姿。
2メートルを超える身長。鋼の鎧のような黒に近い褐色の肌。その全身に刻まれた、様々な数式の入れ墨。
灰色の髪は短く切りそろえられており、黒目も無く白目だけだった。
それに何より声が違う。岩がしゃべっている様な武骨な声だった。
本当に同一人物かと疑いたくなる。完全に別人じゃないか。
それに先生とは呼んでいなかったな。普段は
ついでに言うと、二人ともあの世界での過去に反乱を起こし、クロノスに敗れて探究者の村を作ったと聞いている。
だがこれは何処までが本当なのだろう。
いや、反乱を起こしたのは事実で間違いない。それでラーセットにいられなくなったのも、ひたちさんや本人たちから聞いた通りだろうな。
だけどクロノスは間違いなく居場所を知っていた。その点は
それにひたちさんはノルマの発掘品は納めていたという。他のメンツもだ。俺も協力させられたしな。当然、二人の分も納めていたのだろう。
今更考えれば、これで繋がりはありませんでしたという方が無理がある。
ただあの時代の召喚者は使い捨ての分、放任主義的な所があった。
逆らえば容赦はないが、地の底まで追いかけるような事はしない。
ノルマを果たす限りは、何処で何をしていてもOK。ある程度の犯罪も容認されていたのだろう。
もっとも、現地人に対する犯罪には厳しかったと
だがそれも、強制労働という名目で地下送り。本格的に体制に敵対しなければ、やっぱりあまり変わらないのだ。
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