第422話 すまない龍平
被害を考えたら、そうのんびりとはしていられない。
すぐさま召喚と行きたいが、事情を知るこの3人は許してくれるだろうか?
「考えている事は分かる。私は召喚すべきだと思う。私はまだ例の本体ってのには会っていないけど、今回出た奴よりも強いのでしょう?」
相変わらずスキルで心を読んでいるんじゃないかと疑いたくなるほどに
「それに関しては間違いないな。付け加えるなら、奴はあれでも相当に弱っているんだ。外に出て異物になった瞬間、明確に弱体化しているからな」
「でも、そんな状態でも地球は滅ぼせるんだよね」
「天敵がいない点が大きいだろう。ここに居る3人はもう知っていると思うが、
「でもそれをしても、過去に戻るだけです」
「それでも、俺に倒されたことは相当に不快だったようだ。やっぱり殺されるのは気分の良いものではないしな。しかもなんだかんだで、あれが生涯初めての死だったらしい」
「クロノス様はしょっちゅう殺されているのにね」
「茶化すなよ。大体、実際には死んじゃいない」
場の雰囲気を変えたかったのだろうが、今は真面目な話を継続だ。
まあ確かに外しているとはいえ、死ぬ寸前はかなり不快なんだけどね。痛いし。
「そんな訳で、奴は発見を恐れて地下にいる。だがそれはそれで、
「外に出ると異物になって弱くなるみたいな話は前から聞いていたけど、それでもあいつらよりも強いって言われるとねぇ。もし
どっから見ても戦いたそうな顔をしている……なんか
「それで、
「あの双子なら――というか実際にはいくらでも増えられるようなんだけどな。今は
「ちょいまち。それって、あれは外に出るつもりなの?」
「いや、あれはただの分身だそうだ。別に差し支えはないらしい」
実際にはあるらしいが、じゃんけんでもして担当を決めるのだろうか?
「なら問題無いです。でもいかにも
「だろうな……」
それで前の世界では、ダークネスさんは完全に孤立した行動をとっていたのか?
そしてそれは、当然ながらクロノスも知っている。
もしそうなら、あの村の皆もかなり詳しい事まで知っていてもおかしくは無いのか。
「当面は
言うまでもなく探究者の村になる前のあそこだ。小さいながらもセーフゾーンもある。
地下経由で行けば、どの分身が異物になるかで揉める事もないだろう。
「それはいいけど、肝心な事を言っていないよ。
「奴を倒す為に共闘する事になった。と言っても、情報面ではあまり期待できなかったな。だが戦力面では役に立つだろう。詳しくは――」
俺は、地下で出会ってからの話を全て伝えた。包み隠さず全てな。
俺が見落としている事だってあるかもしれないし。
だが――、
「
「まあどっかそんな所があったよ」
「ロリコンだったですね。でも確かにそんな目をしていたです」
3人が気にしたのは
すまない……俺にはお前を守ってやることは出来なかったよ。
※ ▽ ※
その頃、
本気で戻れば数日の距離だが、1ヵ月以上は掛けてじっくりと進む予定だ。
何せ、教える事は多い。
ただ意外な事に、人間界の常識に関しては非常に詳しかった。
細かな文化的な知識に関しては、
「案外、人間に詳しいんだな」
「はい、ご主人様」
「人間は外から侵入してくる生物の中で、最も多い種類です。しかももはや異物でしかないのに、一部は再び迷宮で生活している不思議な生き物です」
「それ故、我らは不気味なモノとして人間の警戒を怠ってはいません。その一環です」
「その口調は固すぎる。”それ故”などいらん。何処の大御所だ。それにお前の一人称はリリー。そっちはミリー。我らなんて呼び名はなしだ」
「それじゃあ、二人を同時に示す場合はどうするのですか? ご主人様」
「ミリーだったらミリーとリリー。リリーだったらリリーとミリーだな」
「それに意味はあるのか? 大体、最初に名付けてからここまで一度も間違えていない。完全に同じ分身なのに、よく見分けが付くものだ」
「ほら、急に真顔にならない。常に子供らしい表情を忘れないように」
一部の常識などは教える必要が無かったとはいえ、口調や仕草などに関しての教育は忘れない。
見分け方は
二人同時に行動しているが、常に万が一のバックアップ――つまり増殖が出来るようにしている。二人同時に倒される事は避けているわけだ。
だからピッタリ並んでいるように見えても、しっかり前衛後衛の役割分担をしている。召喚者として極限近くにまで成長している彼から見れば、その微かな差も一目瞭然であっただけだ。
特に教えることはしなかったが……面倒だったので。
「それで、前の時代の歴史に関しては全く分からないんだな?」
「うん。だってミリーとリリーからすれば、一度も過去になんて戻った事は無いんだよ」
「この世界に誕生してから今まで、ずっと歴史は続いているよ」
「そこは続いています、ご主人様……でもいいが、まあそれでもいいだろう」
しかしそうなると、やはり前の世界に別の俺がいたかは分からないか。
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