第421話 自分でも酷い人間だと思うよ
薬を使ったのだろう。便利なものだ。
まあそんな事はこの際どうでも良い――、
「
「真面目にとは何だ! これでも最大限の譲歩の結果だ」
何でこいつはこんな方向にこじらせてしまったんだ。
今先輩が召喚されて来たら、どんな顔をして会うつもりなんだ?
いやそれはこの際置いておこう。
「そっちの分身というかただのメッセンジャーはともかく、こちらはこの
「俺がやられたのは、この本体――つーかメッセンジャーに気を取られたところを不意打ちされたからだ。まともにやりあったらそう簡単にやられるものか」
「それよりも随分な言われようだな。協力する以上、お前たち召喚者に手を出すようなことなどしないぞ」
「たとえ身の危険を感じてもか?」
「敵対するなら話は別だ。その場で八つ裂きだな」
やっぱダメだ。こいつらにとって、何処までが“敵対”になるのか分からない。
取り敢えずスカートをめくってみるか? だがそれで逆鱗に触れて交渉決裂となったら本当のバカだ。
それにそもそも、ラーセットらの現地人が大人しくしているかどうか……人間でない事は一目でわかるしなぁ。
「他の連中にはいずれ説明しよう。それとダークネスさんの体は後で持ってくる。あの時は確かに一緒にいたんだ。記憶は無くても、あれがどんなものかが分かるかもしれないからな。そんな訳で、後はよろしく。くれぐれもおもちゃにするなよ」
そう言って、入り口までの距離を飛ばして俺だけが戻った。
到着したのは夕方頃。あれから8日が経過していたそうで、今日で9日目。それももうじき日が沈む頃合いか。
まだ地下からはあまり知性の無い
まあ死なないように注意は払っている様だし、良い訓練にはなるだろう。
そんな中、
というか、石造りのものすごく立派な建物が建っているんですが……。
「今戻ったよ」
その建物がこちらの管轄だってのは、召喚庁のマークが付いていたからすぐに分かった。
「お帰りなさい。無事でよかったわ。もう少し戻りが遅かったら、探索チームを編成しようかって話になていたの」
「俺が無事なのは、フランソワが作ったアイテムで分かっていただろ?」
「探知範囲外だったのよ」
そんな奥まで行っていたのか。
というかそんな自覚は無いな。場所的な問題で、だからこそあの分身がいたのかもしれないな。
中には
他の教官は、生き残りを連れてラーセットに戻っているそうだ。
取り敢えず、ここに居るメンバーは全員治療は終わっていた。まあ当然か。
「お帰り」
「ようやく戻ったですね。では詳しい話を聞かせてもらうです」
そういうと、
「当然話すが、その前に被害状況を教えてくれ」
「あたしのチームからは4人が脱落です」
それは聞いていたが、改めて言われると鉛を飲み込んだような気分になる。
7期生の戦闘力は完全に別格。どんな自由も許されるほど、他のチームとは明らかな差があった。
そして、それ以上に付き合いも長い。
なのに7人中4人。ほぼ半数の被害だ。
片方は元々教官組としてチームから離れていたとはいえ、それはそれで彼女のチームは実質
元々が全て承知のチームだ。これを機に全員解散して帰還となってもおかしくはない。
だけど、それは損害が大きすぎる。
「こちらは
つい先日――というより俺たち召喚者にとっては、たった今4人もの仲間が死んだ相手に酷い事を言っているとは思う。
これで殴られても文句は言えないだろう。
だけど――、
「一応考えておくです」
先ずは保留としてくれただけでも感謝だ。
「他は17期生から2人。
正直忘れてしまいたいくらいの損失だ。
19期生なんて、顔も知らないとはいえ俺と同じ高校出身者だしな。
これで地球に戻ったら、間違いなく俺の高校から死人が出る事が確定した訳だ。
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