第406話 貰ったのはいいけどどうするか
「俺が送られてきたって?」
「いやあえて言うがお前じゃねーよ。つうかだったらお前は誰だよ」
ウェーハスさんから送られてきたブラッディ・オブ・ザ・ダークネスさんの事を
その間、こいつはずっと
一応修業とは言っているが、人員や能力に不安があるチームに加わっては助けつつ、この世界の常識を教えている。
前の世界では相当に心残りであったらしい召喚者の扱い。それをこいつなりに是正したいと考えているようだ。
「ああ、確かにこいつだ。当時ついていたような傷はねえな。新品まっさらって感じだが、これで間違いない。あのブリキ野郎だ」
俺と呼んだりブリキ野郎と呼んだりと忙しい奴だ。
まあ心の中で整理が出来ていないんだろう。その気持ちは俺にも分かる。
「やっぱり
「一応はな」
「ん? 少し歯切れが悪くなったな」
「この世界、案外オンリーワンってのは少ないからな。案外、地下の何処かにはこんなのがゴロゴロと転がっているかもしれないぜ」
「あー、その可能性があったな。だがその光景はかなり怖そうだ。ましてや一斉に話しかけられたりしたら逃げてしまいそうだな」
なんて軽口を叩きながらも、お互いにこれが本物だと実感していた。
俺はスキルで。
「見たところ鎧のように着ることは出来ねえな」
「その辺りは出会った時から気になっていたけどな。実際には何処にも隙間は無いし、関節部分も一体型だ。顔ものっぺらぼうだしな」
「プラモよりもいい加減な造りだな」
「なんだ、プラモになりたかったのか」
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
「だからその先に足を出す癖を止めろ」
「てめえこそ、イチイチ返すんじゃねえよ」
回し蹴りを放った左足は前と同じ様に砕けていたが、今回はもう予想してあったのだろう。さっさと薬を飲んで治していた。
「もしあのブラッディ・オブ・ザ・ダークネスさんが本当に
「特に変える理由もないんじゃないのか? もし俺がこれになったら、その時の名前は、ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスでも良いと思っている」
「意外だな」
「まあ考えてもみろ。もし今の段階でお前が召喚されたらどうする?」
「それはずっと考えているけど、実際難しいんだよな。とにかく今来てもらうと困る。何もかもが準備不足だ」
「それでも来たら?」
「やはり追放するしか無いな。何せ俺の制御アイテムを渡すわけにはいかないし。まあ死なないように、ずっとくっついて見守る事にはなると思うがね。とはいえ、そんなことしている時間なんてないんだよなー。誰か信頼できる人間と交代しながらか、もしくは全て任せ――」
「どうした?」
「いや、その役目をダークネスさんとひたちさんが担っていたのかなと思ってな」
「話の内容を考えれば今更だろう。あのブリキ人形は間違いなくクロノスとも繋がっていた。ある意味自作自演だったのではないか?」
「俺の方にはそんな自覚は無かったけどな」
そうは言いつつも、俺ならやりかねないという想いしか沸かない。
というか、そう考えた方がつじつまは合うんだ。
本気で殺そうとしてくる召喚者に対して、俺を守り、また情報を提供して誘導する存在。
確実に、俺なら事前に用意しておくな。
「まあ何にせよ、追放する事は変わらない事実って訳だ。幸いお前は女がいればOK。しかも異常なほどの復帰速度だ。制御アイテムが無くとも、ある程度は何とかなるだろう。そう考えると、お前のスキルは実に便利だよ。それだけでもチートと言って良いな」
制御アイテムを自ら捨てて暴走した
いや実際、スキルはこの世の摂理に反した強力なものだ。研究しているフランソワや
力の強弱で言えば比較にもならないが、それをただの人間が使うんだ。負担は案外大きくて、あまり何度も使ったり長時間使いっぱなしにすると精神的な負担がきつい。最悪の場合は動けなくなり、1週間から1か月は心の安静が必要だ。
そうでなければ心が壊れてしまうし、ましてや制御アイテムを失えばスキルを止めることが出来ない。それはすなわち、精神の死を意味するわけだ。
けど俺は、条件さえ揃えば一晩でスッキリ解決。条件はまあきついし、本来であれば
女性型のモンスター……試してみた事は無いが多分ダメだろう。つか絶対に嫌だ。
「どれだけの人間に生かされてきたんだろうな」
「心身の強化という面では、全ての召喚者や現地人がそうだろうな」
「マジで殺しに来た連中には、さすがに感謝できないわ」
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