第400話 少しはいたわれよ
召喚の塔の部屋から出ようとすると、いつもの様に信者たちが運び出そうと待っていた。
だがマーシアの説明で全員動きが止まる。後は任せて良いだろう。
俺もようやく、少しは落ち着いてきたよ。
彼女が説明をしている間に、俺たちは召喚庁の執務室へと移動していた。
正確には途中で誰とも会いたくなかったので、俺だけ先に距離を外して飛んだ。
どう説明するかも悩んでいたんだ。
やる事はもう決まっている。目覚める前に彼女は日本へと帰す。
万が一こっちの世界で死なれでもしてみろ。俺はもう立ち直れない。
今まで多くの人間を騙して働かせて、そして殺してきた俺が言って良い事ではないかもしれないが、これは決して譲れない事なんだ。
1時間ほどして、全員が召喚庁の執務室に到着した。
そして開口一番、
「話したくない事であるなら、話さなくても構わない。それに、あの召喚者たちがクロノス様の知り合いだって事は全員が理解したよ。でも、良い意味なのか悪い意味なのかは分からない。だから彼らの処遇も任せるし、その結果にも口は出さない。OK?」
おそらく、ここに来るまでに決めていたんだろう。
実にありがたい事だ。だけどこれは、やっぱり話しておいた方が良いだろう。
「既にここに居る何人かは知っている事だが、改めて端的に言おう」
さすがにこの状況で話さない訳にはいかないだろう。
既に
高校生の時に召喚された事、スキルが無いとして追放された事、様々な人の協力の元で生き延びた事や、
それに、前の世界では誰かを帰す事は出来なかった。ただ一つ、召喚アイテムの一部を使うって裏技的な手段があっただけ。死んだら漏れなく本当に死亡。
だけど俺は実際に帰す事が出来るようになったし、それは向こうで共に過ごした
ただ死んだら本当に死ぬ事に関しては、話したのは
ではあったのだが――、
「まあその辺りは予想済といいますかね」
「今更驚かないわねえ」
9期生の
「あ、それもうリーダーから聞いているんすよ」
「だからうちのチームは命が一番ってね。スリルも同じくらい大切ですが」
7期生から教官として引き抜いた
まあ彼らのリーダーである
「それで、聞きたいのはそんな事じゃないの」
「あの人たち――というより、あの女の子は誰なの? あんなに動揺したクロノス様を見たのは流石に初めてよ」
話を切り出したのは
そりゃ知りたいだろうな。俺としては微妙に話したくはなかったのだが仕方がない。
いや本当に、これだけは話したくなかったんだよな。だって当時の話的には関係ない事じゃん!
でもこうなってしまうと、やはりそうもいかない訳で……。
「彼女の名前は
「“だった?”ってのは何すか?」
「その辺りの事、詳しく知りたいわよねぇ」
容赦なく食いつく
だけど黙っているわけにもいかないか。
「実はな、俺と一緒にこの世界に召喚されてきたんだ。だけど俺が追放されて
「それはまた何と言ったらいいか」
さすがに
「それで、肉体関係はあったの? クロノス様と
「俺は……無かった。まだ高校生だったし、小学生の頃からの付き合いだったし。焦る事は無いというか、その……プラトニックな関係だったんだよ」
「
「クロノス様だったら、小学生の時に出会って即ってなってもおかしくないわ」
「お前ら俺をどんな目で見ていたんだよ。大体、その時は俺も同じ小学生だ。まあそれと向こうの方の話だがな……
「うわー……何と言うか、よく生きてられるもんです。僕なら恥ずかしくて死んでますわ」
「まあ良いんじゃないの? 男も女も世界に一組ってわけじゃないし。実際クロノス様も、とっかえひっかえしまくりでしょ? 別に彼女が他の男と寝たって良いって事じゃないですか」
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