【 特別任務 】
第391話 地下の町は久しぶりだ
実は微妙な所だったりする。何せ俺にとって距離は関係ない。大まかな距離と方角の目星さえつけば、一気にそこまでの距離を外して移動できるからだ。
ところが人をテレポートさせるスキルと違い、俺は他人を移動させることが出来ない。
日本へとか、どこか知らない遠くの世界とかへは送れるんだけどね。
だけど彼女がいれば、スキルは使いたい放題。制御アイテムとか関係ない。縦穴だろうが横穴だろうが開け放題だ。
あまりやると
この辺りは、状況を見ながら使い分けていくしかないだろう。
そんな訳で今は
連絡用のアイテムを使い、
彼は教官組ではあるが、もう長い間、教官組としての仕事はしていない。
というか、俺が4年間も新規の召喚をしなかったのだから当たり前ではあるが。
ただこれからも、召喚組としての仕事からは外れてもらう事になりそうだ。というか、そうなる。
待ち合わせ場所はセーフゾーンの町『カルクマナッセ』。
普通に行ったら11か月はかかる距離だが、俺と児玉の速度なら4か月ほどだ。
こんな遠くの町と連絡が取れるようになったのは、フランソワと
かつては奪い合いが認められていたため、提出品以外のアイテムは秘匿されてきた。
特に帰還する時に提出する強力なアイテムは門外不出に口外無用。
なにせ奪われたらそこまでの苦労が水の泡。それに、この世界での死が本当の死だと予想を付けている連中にとっては死活問題だった。
だから隠したり持ち歩いたりるするのが当たり前で、チームが壊滅すると全部消えたり行方不明となるわけだ。
しかもそんな状況だから、チーム同士の交流は極僅か。迂闊な儲け話は死を招くわけだな。
ところが今はそうではない。召喚者同士は情報を共有し、必要なアイテムは保有してもらうが、そうでないものは召喚庁が預かり、要求があれば他の召喚者に貸し出したりもする。
そもそも、殺して奪ったら
おかげで奪い合いはなくなり、なかなか自分たちに合うアイテムに出会えなかった召喚者も減り、結果として効率は急上昇した。
さてこうした結果、今ではセーフゾーンの町には通信用のアイテムが設置されている。
更には小規模なセーフゾーンにも、全部ではないが緊急用の連絡アイテムや、フランソワと
そんな事やこれまでの話を
ここは地下の町としてはかなり大規模な部類に入る。
広さはドーム球場10個分くらいか。2か所ある小高い丘には巨木が立ち、その根元からは水が小川の様に染み出ている。
巨木は季節に関係なく常に実を付けており、しかも食べられるのだから至れり尽くせりだ。
迷宮の町は基本的に兵士よりに特化した
天井の中央には少し眩しさを感じるほどの巨大な鉱石が飛び出している。明かりを消せないのは不便だが、この木が成長できるのはあれのせいだろうか? なんて
ただあれによりいつでも明るく、土の大地には草原の様に草が生い茂る。
そんな中、現地の石材で作った大量の建物が立ち並ぶ様子は壮観だ。
ここの住む人間は、資料だと14万人。周辺のセーフゾーンを繋ぐ重要拠点である。
2か所しかない出入り口には、当然ながら何重にも分厚い金属の扉が設置されていた。
だが俺たちが到着して挨拶すると、大慌てで全部の扉を開いて通してくれた。
まあ当たり前か。彼らには一切敵意は無いし、そもそも一目でわかる召喚者相手に逆らう訳もない。
同時に、治安が維持されていることにまずは一安心だ。
目が届かなくなると、どうしても色々と暴走するからな。どちらがとは言わん。召喚者にも現地人にも、両方可能性はある。
安定していて本当に良かった。
明るい事もあって時間は分からないが、このセーフゾーンの町はかなり賑わっている。いつか
半露店の店舗が並び、様々な商品が売られている。まあ殆どが食品だ。
荷車や採掘道具の販売・修理を行う店や、武器防具の取扱店も当然ある。
そこまでは普通だが、この世界では馴染みのないラーメン屋とカレー屋がある。
どう考えても召喚者用だろう。それだけ、出入りもあるって事か。
だけど待ち合わせはそんな人の多い所ではなく、町長兼警備兵長の自宅だ。
これは珍しい事ではなく、町長は軍務庁から派遣されてきた兵団長が兼任する。
何かあった時に迅速に行動できるからね。
改めて、ここが安定した地上では無いと考えさせられるよ。
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