第392話 13期最後の生き残りか
こうして人混みをすり抜けながら目的地に到着したが、見た目はもう完全に普通の平屋。
外見だけなら宿屋の方が立派だろうな。あっちは2階建てだったし。
隣は兵舎と食堂が併設され、警備兵長の私室から一歩出ると、そこはもう会議室という造りだ。
見た目だとか権威だとかへの配慮は一切無い。本当に実用しか考えられていないな。
まあいつ
労ってあげたかったが、今はシフトの関係で熟睡中だそうだ。
対応した副官は起こしてくると言って張り切っていたが、今回は断った。休息も大事な仕事だ。
後で
それにどうせ挨拶だけしてまたすぐ寝るって事は無いだろうし、絶対に対応に時間を取られる。だけど、こちらもこちらでやる事があるんだ。
そんな訳で案内されたのは兵舎にいくつかある個室の一つ。
現在
だがそんな事よりも、扉を開けて驚いた。
中はさほど広くはないが、主にセーフゾーンを行き来する警備隊の隊長が滞在する場所だという。
その為リビングにキッチン、ベッドなどの寝具まで全て整っている……訳だが――、
「へえ、これはこれは……お邪魔だったかな?」
「クロノス様ではありませんので大丈夫です」
なんかチクリと棘が刺さった気がするが、そこに居たのは
まあ全員知ってはいたけどね。なにせ、
彼女たちは第13期生最後のメンバーだ。全員が平山女子高等学校の出身者で、帰った者もいるが、多くは死亡者だ。
丁度、教官組の手が足りなくて犠牲者が増えた頃だな。
あの頃の事を教訓にして今があるが、最近――と言っても俺が黒竜に会っている間に更に二人が失われてしまった。
これ以上の損失は避けたいところだな。
一人目が
何と言うか普通の子。というか、世の中そんなに個性的なメンバーばかりではないよな。
身長は158センチ。体型は標準の域を出ないな。高校1年生だったが、ほんの数か月前までは中学生だったんだ。最初の内は何処かあどけない所があったが、今は立派な戦士の顔つきになっている。
下乳がかろうじて見える程度のレザーアーマーに金属のショルダーにブーツ。腰には装備していないだけで
下は紺のミニスカだが、インナーは金属製のブルマだ。期待はするな。
ちなみに俺に透視能力は無いが、その程度の事は見れば分かる。
武器は何にでも使える万能ナイフを腰に下げている程度だが、彼女のスキルを考えれば武器で戦うのは最終局面だ。
しかしさすがに町とはいえ、ここは
ちなみに彼女のスキルは“設置雷撃”
空間に幾つもの言えない雷撃ポイントを設置し、起動と同時に一斉に設置されたポイント同士が雷撃で結ばれる。
設置できるポイントは、今の所60か所ほど。電撃が流れている時間は、最長で30秒ほどだそうだ。
金属製品に流れないかを聞いたことがあるが、それは無いらしい。
あったら、彼女と一緒に探索をするメンバーは誰も金属を持てなくなってしまうな。
このメンバーの中では最強の戦闘メンバーだ。
二人目が
このメンバーの目的を考えると、中核はむしろ
元は2年生で、書道部だったそうだ。ラーセットにあるまともな日本語の看板の多くは彼女の作である。怪しげな日本語のは大抵パチものだ。まるで関係ない話だが。
戦闘能力は皆無に等しく、鎧は鎖で編んだポンチョ。それもフード付きだ。
青と緑の不定形な球にオレンジ色の縁取りと、まるで毒でも持っていそうなカラーリングである。
まあ彼女に限らず、身に着けているものは服まで含めて全て迷宮産だ。それも彼女たちくらいになると、超高級品の部類だろう。見た目を気にするのは野暮ってものか。
身長は151センチとこの中では最も低く、性格は明るく飄々としている。今もこちらを見ながら、ひらひらと手を振っているよ。ポンチョの袖が長すぎて手は見えないが。
初めて見た時は腰まである長く美しい黒髪で、黙っていれば
1度
やっぱり邪魔だったんだろうなー。
話がずれたが、彼女のスキルは“痕跡探知”だ。
普通の
そこに何も無くても、過去の映像を見ることが出来るそうだ。
そんな訳で、寝室に彼女を入れる奴はいない。いやこれはどうでも良い話か。
「久しぶりだな、
「ばっちりですよ。今では5年位は遡って視ることが出来るようになりました。ただそれだけ時間が掛かっちゃうんですけどね」
「それは凄いが、時間の方は問題だな。もう少し護衛を増やした方がいいか」
「それも含めて、今後の事を話し合うために来てもらったのですよ」
「
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