第385話 またこれを聞くハメになったか
最後は自爆だったのか。壮絶な最期だったんだな。
あの人には、何度も何度も世話になった。
ひたちさんを紹介してもらわなかったら、俺は召喚者に関して何も知らないままだった。
旅の道中も、何度助けられたか分からない。というか死んでいたよ、間違いなくな。
召喚者の村に受け入れてもくれた。
あれが無かったら、俺は当てもなく何処までも皆を連れて
そして最後の最後まで、俺を守ってくれた。
やはり気になってしまう。本当に
状況証拠で考えれば違う。有り得ないんだ。
だけど行動の全てが、大人になった
自分が
そう考えると、正体を明かさなかった事にも理由は付く。
「それで、倒した後は俺を追ったのか?」
「ああ、そうだ。だけど一つ気になる事があってな」
「気になる事?」
「ダークネスは確かに粉々になった。だけど一部残っていてな、そいつが俺に色々と言いやがったんだよ。その内容がな……」
「何かあったのか?」
「俺が考えていた事や感情なんかを的確に言い当てやがったんだ。細かい事までな。まるでこちらの心を読んでいるようだった」
「召喚者相手にスキルやアイテムでは出来ないだろう」
「そうだ。俺が
「一つ?」
「さっき、俺が記憶を取り戻した場所に文字が掘られていたといっただろう?」
「ああ、お前の筆跡でだったな。気にはなっていたが、それも関係するのか?」
「ダークネスが言ったんだよ。あれを掘ったのは自分だとな」
自分で掘って忘れているとしたら、もうそこまで精神状態がおかしかったとしか言いようがない。
でもそうでないとしたら、ダークネスさんの言うように彼が掘った事になる。
「他には何か言っていなかったか?」
「あまり言いたくはないがな。端的に言えば、さっきも言った通りだ。俺の考えていた事を全部当てやがった。それだけじゃない。お前は
そこまで行って、ふと表情が変わる。
「どうかしたのか?」
「最後に奴が言った言葉を思い出していたんだ」
「思い出せるか?」
「ああ。『全ては我の予想通りよ。お前は所詮道化に過ぎぬ。踊れ、踊れ。それがお主に与えられた役割だ。そうだ、お主は自らの愚かさ故に失敗したのだ』だな」
「奇妙な言葉だな」
「何処がだ」
「全部ダークネスさんの予定通りなんだろ。そしてお前は道化で、踊るのが役割だと。そして、お前が愚かだったから失敗したと……」
「それで?」
「ダークネスさんは、お前が失敗する事を知っていた。違うか……役割と失敗は別かもしれない。だけどどっちにしろ、何が失敗なんだ?」
「さあな。だが奴と戦うまでに嘘は無かった。結局はお前に敗れたのだから、最後まで当たっていたと言えばそうだ」
「他に何か言っていたか? 戦闘前とか、その後とか」
「そうだな……いや、ただ挑発ばかりだ。アイテムを失った時にはざまあみろみたいな感じの事も言われたな」
結構辛辣だなー。
だけど、俺は未だにダークネスさんが悪人だったと思えない。
微塵も疑っていないと言って良い。
返しきれないほど世話になったというだけではない。
当時は確かに普通の高校生だった。だけど地球に戻ってから、生死の境目で様々な人間の本性を垣間見た。その上で確信できる。彼は善人だ。間違いない。
なら、残した言葉は何だ?
やはり
もしダークネスさんが
だけどそんな事をすれば、
俺はクロノスに勝てなかった。だけど
たった一回の戦闘で格付けするなど愚かな事だが、それ以上に俺自身が力の差を理解した。
それで考えると、ダークネスさんは
だから自分の代わりに
さすがにそこまでやったら見逃せない。最期は必ず、自分は
高校生の自分と今の自分。両方を失う愚を犯すだろうか?
予想通り。踊れ、踊れ。それが役割……ダークネスさんは
だけどそうなると、失敗ってなんだろう?
分かりはしないが、何か予定と違ったことは間違いないんだろうな。
そしてその予定は、良い方向と悪い方向、どちらへ向かっていたのか……。
「まあこんな程度の話だ。結局お前に負けたが、それで地球に戻ることが出来た。あそこで残せたものなんて正直何もないが……いや、違うか」
「何か残せたのか?」
「今のお前を残せたことが、俺が生きて帰った意味だと言ってもいいだろう」
「うわ、くさっ!」
その言葉と同時に、俺は蹴り飛ばされれて大木に叩きつけられた。
不意打ち過ぎて、完全に油断した。体が動かないまま、ミシミシと背中で嫌な音がする。
ああ、こりゃ死んだわ。
《避けられない死が確定しました。“ハズレ”ます》
うわー、懐かしい。
そんな事を考えながら、俺が倒れてきた大木の下敷きになって死んだ。
いやまあ、すぐに戻ってきたけどね。正確には死んでもいないよ。
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