第372話 あれを翻訳できたとは
まあ昔の事はいいや。正確には未来の事だけど、この際どうでも良い。
「詳しく教えてくれないか?」
「元々は
というか、今ので現在の力関係は分かったな。
まあフランソワの方が先輩だからある意味おかしくはないか。
「スキルを使っていると、時々頭の中に響く言葉のような音な響くんです。
「それは俺も感じてたな。初日はとにかくうるさくてしょうがなかった」
ここでいう初日は再びラーセットに来た時だな。
高校生の頃には、もうアナウンスは普通に聞こえていたし。
「それで、その音に何か法則性があると思いました」
「もし本当に言葉なら、意味があるんじゃないかって私たちは考えたんです。それで
「正確には時計ですね。クロノス様がこの世界に持ち込んだというアレですね」
「あれか……」
いやマジでゲームの特典よ。こんな事をメーカーさんが知ったら、色々な意味で驚くだろうな。
「でもいくら時計を調べても何も分からなかったんです」
「そんな時、フランソワっちの制御アイテムが壊れたのよね」
「お恥ずかしい話ですが、便利だったもので……」
うつむいて真っ赤になっている。本当に恥ずかしいのか。
彼女の能力はアイテムテレポーター。まあそう言っても色々なタイプがあるが、彼女の場合は物品召喚だな。
しかも目の前にトンと出すのではなく、弾丸のように弾き出してくる。
まあ普通にも出せるのだろうが、あの能力には本気で苦戦した。というか、逃げなきゃ死んでいただろうな。それ程に厄介で汎用性の強いスキルだ。
「それでフランソワさんのアイテムを取り出す時に、声の大元が分かったんです」
「その流れからすると――」
「はい、神官長がアイテムを取り出すところです」
「光の膜のようなところか。平面なのに立体で、中からスキルを制御するアイテムが出てくる。ある意味不思議なものだな。それで、そこから声が出ていたのか?」
「正確には声の元です。それが時計を仲介して、私たち召喚者の頭の中に送られていたんです」
なるほど。以前別の理由で時計を調査したが、それらの事は全く分からなかった。
それもそのはず。あれはいわばスピーカーみたいなものだったわけか。それも、直接対象の召喚者本人にだけ届けられるな。
時計が手元にあったのに、気が付かなかったのは恥ずかしい。
だがあの時点で俺にメッセージが飛んでこなかったから仕方がないと思っておこう。
「後はそれっぽく翻訳してみたのですが、まだ正確とは言えないみたいで」
「あと小さな信号まで拾うとかなり細かくスキルに関して伝えている様なんです。それも全部言葉として分かるようにしたのですが――」
「まだまだ翻訳の精度が悪いらしくて逆に混乱させてしまって。それにスキルを使うたびに声が響くと集中できないと怒られました」
まあ、翻訳はかなり正確だったと思うぞ。
それにやっぱり怒られたから切ったのか。予想通りだったな。
「しかしスキルを使った時にノイズのようなものを感じていたのは事実だしな。それが意味ある言葉として分かるのなら相当便利になる。お手柄だな。後は精度を上げるように努力してくれ――あ、という事は」
「ああ、それは大丈夫。けんちっちもフランソワっちも、今は地上勤務だから」
「4人はそれで良いのか」
「あたしらはけんちっちがやりたい事を尊重するよ」
「私らも縛られたくは無いしね」
それは教官なんてやらせている事に釘を刺されたのだろうか?
でも結構自由な立場にはしているから、反乱なんてことは無いと思う。
つかしないでね。
先代のクロノスは、何度も反乱を起こされたと聞いた。
俺も一回やられたし、今後も無いとは言い切れない。
そこで俺も先代の俺も、かなりの自由を与える事にしたわけだ。
ただ違いは、俺は教官組を自由にして独自に行動してもらった事。
逆に先代は教官組を待機させ、召喚者の方を自由にした。
どちらが正しいのかなんて分からないが、先代には代々の俺が継承した知識がある。
そう考えると向こうの方が正しいのだけど、俺は今の方が良いと思うんだよね。
というか、もう状況が色々と変化している。
今なら分かる。現在の俺は、あの時に出会った俺を凌駕している。
それにひたちさんも
そんな話があったら、寝物語に一度は聞いているはずだからね。
だとしたら、倒してさえいないんじゃないのか?
なら、やっぱり今のままで良いんだ。失敗したら、随時修正して行けばいいさ。
「あ、後ですね、死んだら深い所のセーフゾーンに遺体を飛ばすようにしました。なんでも、そうした方が良かったんですよね」
そんな俺の暢気な展望を、
あの……何処まで聞いておられるのでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます