第364話 ここもかつては多くの人が生活をしていたのだろう
かつてユーノスと呼ばれた小さな国。
だが今では完全に破壊され、廃墟となっている。
かつて高校生だった頃……俺がまだ
その時の話では、ラーセットを襲ったあいつに破壊されてしまったという。
そしてどこの国も、自分の国にある
かなり近い国同士では、
ただ前者の場合、それを防ぐために同盟が結ばれる。南北の大国なんかがそうだな。
それでも、歴史や文化、宗教によってはそうもいかない。
そんな時は後者。つまりは戦争だな。
だけど、基本的には封鎖による圧力と内部に協力者を作っての破壊工作や懐柔が主体だ。
俺たちの世界の戦争の様に、派手にドンパチして壊し合うような真似はしない。
なぜなら、復興に手間が掛かりすぎるんだ。
数千メートルにも及ぶ壁。そして高層ビル。それに民家なんかもそうだな。
どれも、素材は
そんな訳で、ここまで壊れてしまうともう再興は断念される。
いつか英雄的な国家が誕生し、この周辺を完全制圧した場合、ここも復興されるかもしれないと聞いた。
だがこうして都市を散策すると、それは夢物語だと思う。
破壊された壁からは外が丸見えで、あちらこちらに
建物の残骸は完全に植物に覆われ、あれを撤去して更地にするだけでも一大事業だろうな。
その作業をするためにも壁を修復し、地上の安全を確保してから危険な
……あまりにも現実的ではないよ。
それだけに大きな疑問だ。
奴はなぜ、ここをこれほどに破壊したんだ?
あの時、あいつはセーフゾーンで眷族に護衛されてひっそりと息を潜めていた。
ここを襲って無人にしたのなら、ここを巣にでもすれば良いじゃないか。
そもそも、奴は壁まで壊す必要がないだろう。普通に登っていたしな。
人間がここを安全地帯にしている様に、奴にとってもここはセーフゾーンよりも安全な地だろうに。
ラーセットを襲った理由も不明だ。
高校生時代も考えると、南方国家のイェルクリオを襲った理由もだな。
襲う事は単なる本能で、後先は考えていないのだろうか?
だがそんな単純な相手ではない事は、既に戦って実体験済みだ。
言葉を話し、過去に戻る能力も有している。それもちゃんと考えてだ。
その辺りが、奴を見つけ、倒すヒントにでもなればいいんだけどな。
▼ ▲ ▲
こうしてしばらく滅んだ国ユーノスを見回った後、俺はその都市にあるセーフゾーンから地下へと潜った。
まだ鍾乳洞型の
それに合わせて黒竜の位置も動くなら待ちたいところだが、残念ながらセーフゾーンは動かない。
あ、だけど初めてここに来た時、その目的はあの黒竜を倒す為だった。
何でもセーフゾーンに入り込んでしまったからだと言っていたな。
そうすると、あいつは何かに自分のセーフゾーンを追い出されたのか?
情けない話だ。
最初の目的はそのセーフゾーンにした。
楕円形で、まるで陸上競技場のような感じの広さと形。
床の壁も天井も一面隙間なく石造りだが、少しザラザラした床に比べて金や天井はつるつるだ。
懐かしいというか、さっき入って出たばかりというか、相分からず感覚のずれで少し混乱する。
取り敢えず、セーフゾーンの形は変わっていない。何があっても変わらないのだったな。
一応、人工的に変える事や壊す事は可能だけどね。
そこに居たのは黄金の牛だった。金色の毛並みという意味というわけでは無い。純粋な金属としての金にしか見えない牛。大きさは8メートル前後ってところか。
見た目は豪勢だが、それ以上に感じるプレッシャー。力は相当なものだ。
こちらを見つけると、有無を言わさず鋭い角で突進してきた。なかなか好戦的な奴だ。
それに人間なら相手にもならず、並の召喚者で苦戦するだろう。だけどまあ――こいつは黒竜よりも弱い。
角に触れると同時に、勢いを全て外す。
突然止まってしまった体に困惑したのか再度動こうとするが、その時にはもう額から背中まで、真っ二つに外していた。
血の一滴も出ない。断面まで金そのものといった牛は、轟音を響かせて左右へと倒れ込んだ。
我ながら、随分と強くなったものだ。ますます人間離れしたと言っても良いな。
ただ、別にここを利用するわけでは無い。ただ単に、休憩の邪魔だったのと襲って来たから倒しただけだ。
やがては新たな強敵が流れてきて、ここを埋めるのだろう。
……案外黒竜だったりして。
そうだったら笑ってやろう。
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