第353話 とにかく帰還だ
予想はしたが、
そりゃそうだろうな。彼女たちのチームは普通に歩いて潜って歩いて帰って来る。
ぽいぽいテレポートが出来るのなら、そんな事はないだろうしね。
だが成長を続ければ、いつかはそいつ本人も飛べるようになるだろう。そうなったら、それこそ彼女のチームは無敵だな。
そのいつかに期待するとしよう。
そして問題の
だけど戦闘が激しくなった時、だんだんと暴走の兆候が見えた。そんな訳で
ついでに言うと、
そこで仕方がないので、一度俺だけ何度かスキルを使って帰還。
他人の分の制御アイテムは貰えないので、状況報告と地上メンバーには相変わらずの自由行動を言い渡し、再び彼らの元に戻った。
そして護衛をしながら一緒にラーセットに戻ったのは、騒動の最初から数えておよそ2ヵ月半といったところであった。
長かった……。
だけどこれほど長い間、他の召喚者と一緒に
不謹慎だが、確かに
一応、制御アイテムさえ戻れば次第に正常に戻るらしいからな。
ただ暫く召喚はお預けだ。新しい教官組の選出なんかもしないといけないしね。
そうやって大まかな方針が定まると、ようやく一人で執務室に入る事が出来た。
今まで押さえつけていた怒りが爆発する。
何の意識もしていないのに机や椅子などの調度品は一瞬で塵と化し、部屋全体も内側から爆発したかのように全ての壁を破壊してしまった。
当然のように飛んで来る警備員や、ケーシュにロフレ。
すみません、ここまでになるとは思っていませんでした。
何とか大丈夫だからと皆を説得した後、俺は使われてない一室を臨時の執務室として暫く籠った。
考える事は山ほどあり過ぎて、とにかく一度整理が必要だったからだ。
先ず奴のやった事。あれは時間を戻したと考えて間違いないだろう。
チートもチート。不利になったら巻き戻してチャラ。絶対に勝てない最強キャラだ。
そもそもそんな事が可能かなのかと思うが、俺たち召喚者もここでは時間から外れた異邦人。それに俺は過去の世界にやって来たわけだ。絶対にありえないとは言い切れない。
だけど言葉で言うほど簡単な事じゃないぞ、これは。
そもそも、範囲はどの位なんだ?
宇宙まで含めたこの世界全て……まあ有り得ないな。確かにあいつは強いかもしれないが、この星から見ればちっぽけな存在だ。
そして恒星系で考えれば塵にも等しく、ましてや宇宙全体の時間を左右する存在だなんて言われたら、逆に笑ってしまう。
それだけの事をするのにどれほどのエネルギーが必要になるんだろうな。
俺たちの世界の宇宙とは成り立ちが違うのかもしれないが、まあビックバンより多く必要だろう。
故にこれは却下。もっと狭い範囲だ。
この星には土星のような輪っかのある衛星があるが、あれを含むのだろうか?
まあ含まなかったら衛星の位置がずれるのだから、それは無いだろう。
そうなると含むか、逆にもっと狭いかだ。
俺の考えは後者。戻せる範囲はかなり狭いと見ている。だけど、大体前と同じ時間に
ラーセットまで含んでいると考えるべきだろうか?
境界は断絶しているのか? それとも緩やかに少しずつ変化しているのか?
まだまだ謎が多い。
それにそもそもの話だが、俺は奴が時間を戻した事を知っている。
逆に言えば、今まで奴は一度も時間を戻した事が無いのか?
それとも何か理由があって、俺が認識できるようになったのか?
ラーセットから追い返された時、どうしてやり直さなかった?
襲ったのは気まぐれ的なもので、そこまでの価値は無かったと追う事なのだろうか?
だが自らが追いつめられた事で、遂に使う事になったと……。
しかしやっぱり変だ。俺だけが分かったってところがどうにも引っ掛かる。
そもそもの話、巻き戻った時間を合計したら結構な時間だ。
範囲がこの恒星系全体でない限り、必ず時間のずれを全員が体感する。巻き戻った事には気が付かなくても、太陽や衛星の位置が変わるんだからな。
そう考えると、やっぱりこの恒星系全体の時間を巻き戻したのか?
ちょっと考えられないな。
それに、何度も出来るのなら逃げる必要はやはり無い。
勝てるまで何度でも繰り返せばいいだけだ。方法なんて山ほどあるだろう。
実は心優しい奴で、襲われない限り戦わない。危険が迫ったら逃げる……ねーよ。
制約があるのは間違いないだろう。
とはいえ、あの場ではもう見失うほど遠くに逃げられるまで時間を戻されてしまった。
限界を確かめる機会と方法は宿題だな。
もう一つは時間差だ。
奴をしっかりと倒した。それは確認済みだ。
巻き戻せるのなら、その前にするべきだろう?
死んでから時間を戻します――いやすげーチート。
実は生きていたって考えるのが妥当だろうが、それにしたって決断が遅すぎる。いや奴の考えなど想像も出来ないけどな。
とりあえず、詳しい事はまた黒竜に聞きに行こう。
それに実際の所、巻き戻しのカラクリは大体予想が付いているんだ。
対処できるかは別問題だけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます