第350話 何が起きたんだ
敬語が無くなったので昔を思い出したのかと考えたが、どうやら戦闘と制御アイテムを失った事で高揚しているだけの様だ。
だがちょっとバランスが崩れたら暴走だ。少し急いだ方が良いだろう。
幸い眷族など瞬殺だった。大した時間のロスも無い。
スキルで全周囲を確認しても、召喚者とこいつらの残骸だけだ。
何かの意図があって挑んできたわけでもないし、そうだとしても無駄だっただろう。
もっと広範囲を確認すると、雑魚はまだまだ沢山確認できる。
そういや以前にも思ったが、あいつらは何かを食べる様子は無い。光合成……じゃないよな。こうして
となると、いつまで動き続けるのだろう?
でもまあ、さほど気にする必要ないか。
いずれは眷族になるのかもしれないが、そいつが本体になる事はあるまい。
なにせ奴が事故で地上に出て異物になったのは、大昔の話だという。本体が増えるのであれば、今頃世界には多数の本体がいるはずだ。
仮になるとしても、相当な時間が必要だろう。
ただ眷族からでも増えるからな。この世からの一掃はまだまだ先の話になりそうだ。
だけど倒した。本体を仕留めたんだ!
これで地球が襲われる事はない。長かったような気もするが、俺には瞬きする間のような出来事だ。
叫んでしまいたいくらい嬉しいが、まだまだ油断はいけない。
「とにかくこいつらの残骸は全部回収したいが……無理だな。燃えればいいが」
「一応焼いてみるです?」
「そうだな。手ごろな瓶に少し残して、残りは全部焼却しよう。出来なければ俺のスキルで全部塵にまで分解する」
「クロノス様のスキルをまともに見た事はなかったですが、なんか色々出来るですね」
「案外便利なスキルでね。意外と重宝するんだよ」
「それと、戦闘中にいきなり胸を揉む人だとは思わなかったです。もしかしたら、
どうやら物凄い誤解を生んでしまったようだ。
「それにロリコンな人です?」
このとてつもない誤解は、後でしっかりと解いておくとしよう。
しかしロリコンねぇ……。
俺の中では、今でも
だけど、今の俺は29歳。やはりロリコンになるのだろうか?
「というか、お前もうロリコンとかいう歳じゃないだろ」
「この世界では、体はいつまでたっても成長できないですから」
俺たちの時間は止まっているからな。そこはまあ、辛くもあり良くもある面か。
「それで、どうやっても燃えないんだがな」
俺たちが馬鹿な話をしている内に、
だけど燃える様子は無い。微妙に赤くなっているようにも見えるが、あれは着火剤の光か。
触った時の硬さを考えると、ゼリーの様に見えても実際には鋼のようなものなんだろう。
仕方がない。
「じゃあ全部俺がやろう」
スキルを使い、小瓶に入れた僅かな欠片を残して塵にまで分解する。
ただこれで再生されたら結構お手上げだ。どうにもならない。
安全を考えるのなら全ての残骸を集めて何処かに隔離して監視する事だが、いくら石橋を叩いて渡ると言ってもそこまでは物理的に無理だ。
だがまあ、そこまでしなくても大丈夫だろう。
それにこいつの特徴は把握した。仮に何らかの超常現象で再生したとしても、もう俺のスキルからは逃がさない。
例え探知外で復活しても、いずれはこの世の果てまででも追いかけて仕留めればいいだけだ。
決して簡単ではなかった。犠牲も出してしまった。だけどこうして、悲願は果たされたんだ。
改めて考えると、涙が出そうになる。こらえろよ、俺。
上を向いて耐える。今はまだダメだ。
ちゃんと生存者を集め、犠牲者を悼み、その上で個人で喜ぼう。
そして次は、そこからの事を考えるんだ。
「何をぼさっとしている!」
――は?
少しくらい良いじゃないかと文句を言いそうになったが、有無を言わせぬ迫力が俺の意識を現実に引き戻した。
ここは何処だ?
場所を移動している。というより、見覚えがある。忘れようも無いと言って良い。
「この先にいるのか?」
微妙に聞き覚えのある言葉。そしてこの場所。
ここは、奴の本体を探知した場所だ。
この先から、死の恐怖が暴風のように吹き抜けていった。そして奴がいたんだ。
だけど今は、何も感じない。
もう倒したからか? なら今のこの状況は何だ?
「もういい、敵がいるのは間違いないんだ。行くぞ!」
「あ、ああ」
おかしい。俺は夢でも見ているのか?
さっきまでのは、奴が俺に見せていた幻覚か?
召喚者に精神系の攻撃が効くとか凄いなと思うが、ならなぜ
だがとにかく、先ずは奴がいたセーフゾーンに入ろう。
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