第349話 これで決着だ
崩れた地面と一緒に落下するが、奴は大気を震わせながら追ってくる。
そしてどう見ても落下速度よりも早い。追いつかれるのも時間の問題だろう。
俺が逃げたと思い、逃がすまいと感じたのだろうな。
だが奴は知るまい。この俺が、あの時からずっと
そんな事を言うとまるでド変態の様だが、そんな事は無いぞ。これは戦うために必要な事だ。
ここに来た時点でスキルは限界突破状態……と言えば聞こえはいいが、既に限界間近でスッカラカンだった。
常にリスクを考えてセーブしていた訳だ。
だが今は違う。俺の力は相当に回復した。とっくに戦う準備は出来ているのだよ。
「いつまで揉んでるです」
「あ、もうちょっと」
少し緊張感のない会話だが、敵が来ているのに前面で盾にされている様な状態の
言葉以上に焦りを感じる。
だけどこれで良いんだよ。お前が来たって事は、彼女も来ているんだろ?
まだまだこの世界に来たばかり。召喚者としてはまるで成長していない。
だけど彼女の能力は、今この状況では最高のサポートだ。
「くたばれボール野郎!」
上から降ってきたのは
怪我は全快。一見革だが、迷宮産の最高級の鎧にこれまた迷宮産のナックルを装備している。
その一撃が奴の本体を穿つ。粘土に弾丸を打ち込んだ等に、衝撃は中に空洞を作り、その青白いゼリー状の中身は炸裂した爆弾の破片の様に飛び散った。
幸い吹き飛んだのは半分だけだから、こちらには破片は飛んでこない。
代わりに、空いている俺の左手に何かが来た。無意識にグリップを握る。剣だ。
俺が剣を使うとは話した事はないが、まあ選ぶなら一般的だな。
「人間を甘く見たな」
さすがはベテラン中のベテラン、第7期。勇者の剣も凄かったが、こいつはまた別格だ。
突き刺した切れ目から、まるで放射するかの様に無数の亀裂が走る。それは美しく等間隔で、円形だった奴の体はリンゴを綺麗に等分したかのようにパカっと裂けた。
半分だけだけどな。後ろ半分はもう無いし。
これで……倒した?
本当に終わったのだろうか?
足元を外す事を止めれば、すぐに地面に落下する。
いつまでも空中に浮いているわけにはいかない。すぐに確かめないとだ。
当然の様に
だけど援軍として来てくれた
やられたところは確認した。もう埋まってしまったのか。
いや、悲しみは後だ。
「奴の肉片を全部集めよう。肉と言うのかは分からないけどな」
「集めたら再生したりしないです?」
「その時は百万回だって倒してやるさ」
今の俺たちなら無敵だ。たとえもう一回戦う事になっても問題はないさ。
それよりも、こういった奴は完全にこの世から抹消しないと安心できない。俺は石橋を叩きまくる男だからな。どんな些細な可能性すら与えるものか。
あ、でも――、
考える間に、体はもう動いていた。気配も感じていたしな。
地面から飛び出してくる3体の眷族。上半身が人間の様で、下半身が蜘蛛にも見えるケンタウロス。
元は人間だったかもしれないが、頭は無く手足の指も無い棒の無い人型の奴。
それに巨大なダンゴムシのような形をした奴だ。ダンゴムシはよく食ったなぁと思うが、こいつは関節まで全部ゼリー状になってくっついている。
ここまで行くと、もう見た目の関節とかは関係ないんだろう。
「埋める前に、きちんと倒しておけ」
「そんな時間は無かったんだよ」
言いながらも、もうそれぞれ最初の2体は倒していた。
そして残ったダンゴムシもまた、
見惚れる位の強さだな。最後のハスマタンで戦った時よりも、切れが増しているんじゃないのか?
体の方は球体だけどな。
そういや豚って、全身筋肉なのだったか。
「今失礼な事を考えただろう」
「いや、何のことかな」
「誤魔化しても分かるんだよ、お前の考えはなんとなくな」
「……俺が誰だかわかるのか?」
「お前、寄生でもされたのか? クロノスだろ。俺が言うのもなんだが、自分の名前くらい忘れるな」
いやマジでお前が言うな。
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