第348話 心強い援軍だ
血まみれの
マズい、意識はあるのか? というかどう見てもない。
それ以上に、
しぶといだけの微力な敵と、傷ついていく強力な敵。どちらを狙うかは、自明の理だ。
「やらせるかよ!」
だが気付かれる。もしかしたら、これすら織り込み済みだったのかもしれない。
空中で不自然に軌道を変えると、落下する
これは万事休すか!?
もう一度飛びたいが、思考だけが先行して身体とスキルが付いて行かない。
その時だった。何かが本体に当たって四散する。
あれは確かギロチン?
7期生の
最初の頃は高い所にある枝を掃うのに便利な程度だったが、今では中型の
というか何でここに?
「クロノス様、大丈夫です?」
無様に地面に落ちた横には、いつの間にか
相変わらず、凹凸のないボディに革紐のボンテージが煽情的だ。
いやそうじゃなく、そうすると来たのは7期生のチームか!?
本体が濁流に包まれて動きが止まり、そこを空中から現れた茨が包み締めあげる。
それらはすぐに吹き飛ばされるが、攻撃に転じない。
いや、そうじゃなくて動きが鈍い。何かせめぎ合っている感じ――
元々は動物操作という可愛いスキルだったが、今ではセーフゾーンの主の動きすら封じるとは聞いていた。
見たところ完全ではないが、こいつにも効くのか。
あれがスキルの力を示すバロメーターだと言われた事を考えると、彼女のスキルは俺達と比べても遜色ないレベルってことか。
だがそれでも、
土煙を上げて地面にめり込む俺。もう何度目だ。
咄嗟に
事故とはいえささやかな胸に触れ、俺のスキルと意識も休息に回復する。
さてここから再戦だ!
もう逃がさねぇ!
『――クロノス』
それは最初、言葉として認識できなかった。
発したモノも分からなかった。
しかしその言葉と同時に、入り口にいた数人が血飛沫となって飛び散ったことが分かる。
全身に鳥肌が立つ。何だこれは。
『お前たち下等な存在にも分かる言葉で伝えてやる。クロノス。この名を世界から抹消する。あらゆる世界から存在自体を消し去る。それが我が安息を穢した罪と知れ』
もう誰の言葉か考えるまでもない。この球体。奴等の本体。そして倒すべき敵。
感情も何も感じない。何のために言葉を使ったのか。
怒りなのか、それともなぜ殺されるかを伝えるための慈悲なのか。
まあ知った事ではないが。
「今更だな。俺がクロノスだ。そしてお互い様だ。貴様だけは世界から抹消してやる。それが俺の生きる意味なんでな」
『小さな異物如きを率いる矮小な
「させない!」
入り口から槍のように飛んでくる黒いガス。
だけどダメだ、あれでは足止めにもならない。
「よせ! 今は下がれ!」
その言葉も虚しく、
本体の怒りは頂点なのだろう。空気は震え、この部屋にいるだけで全身が痛い。
さっきまでとは桁違いの力を感じる。
実力差は理解した。だけど、倒せない相手ではない事も同時に理解した。
だから――ここまでだ。
地面を派手に崩す。どんな仕組みで浮いているか分からないが、高度を変えられるって事は落ちては来ないだろう。
さらば本体。今は倒せなかったが、色々と分かった事も多い。
後はこれを今後に生かすだけだ。
――なんてね。
相手はそんなに甘くはない。状況はどう考えても不利。向こうは殆どの眷族を
それを差し引いても、必ず今倒しに来る。
なにせ奴にとっては、俺たちは今まで殺してきた人間という名の異物。それが自分を脅かすなど考えてもいなかっただろう。
それがこんなことになったんだ。今後似たような事が起ころと考えるだろう。
そしてそれらの中心は、『クロノス』という存在であることを学習した。
だが連中の常識なのか、さっきの言葉からするにクロノスは単体では無いと考えたようだ。そしてそれがどのようなものか、奴は知らない。
もしかしたら、自分と同じように
なら当然、追ってくる。これからの安全のために。
だがこいつは知らない。俺という存在も、召喚者というものもな。
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