第338話 そこまで成長していたのか
まあこれで当面の方針は決まった。
後は目覚めまで待機だし、目覚めの間までの移動は神殿庁の職員がやってくれる。
もうここに用は無いので出ようとしたのだが――、
「そこまで重要な人物ならコピーを作りたいところだけど、目覚めると消えちゃうのよね」
なんか
「コピーって人間のか? そこまで出来るのか?」
「前に試したんだけど、本人が目覚めると崩れて消えちゃうのよね。現状は役には立たないわ」
「それって現地人に対して使うとどうなるんだ?」
「一時的に2人なるわね。同時に3人は無理。当然だけど、別々の2人をコピーするのも無理よ。コピーはあくまで一人だけ。それに数日でやっぱり崩れて消える」
さらっと言っているが、試したって事だよな。結構怖いことしているな—。
とはいっても、
「それだと現状は使えないな」
「いつか何かに使えるかもしれないから、一応出来るって事だけは覚えておいて」
「なるほどね。現状では使い道は無いが、頭に入れておいて損は無いな」
やはり同一人物は同時に存在できない訳か。
ただ現地人は存在できる。もしかしたらいつかは召喚者のコピーも作れるようになるかもしれないのか。
でもまあ召喚者にスキルが有効なのは初期も初期。俺のコピーとかは不可能だろうな。
それに、それはそれで自分を見るのは複雑な気分だろう。
それにしても、前の世界での
普通に召喚者のコピーを作れるのなら、俺を含めて死ぬようなことは無い。だけど現実はそうじゃなかった。
結局できなかったのか、そもそもそこまで成長する前に命を落としたのか。
当時生きていた人間が今は亡くなったりもしているんだ。逆もあってもおかしくはないだろうな。
まあそんな他愛もない会話をした――と言って良いのか分からないが、とりあえず数日後、いつも通りに全員が目覚める事になった。
ここで物凄く驚いたのだが、あのフランソワって子の本名が
今時なかなか聞かない名前だ。それが嫌でフランソワと名乗っていたのだろうか?
どんな経緯でそうなったのか知りたいので、彼女をフランソワと呼ぶことは控えよう。
それとこの名前には覚えがある。
そしてちょっとした
こうして2週間ほど基本を学んだあと、いよいよ
ただまあ、“本格的な”と言っても2か月ほどだ。基本を学び、その後は他のベテランに加わるか、自分たちの仲間内で固まって独自に行動することになる。
一部はいきなり泣きながら『帰るー!』と言い出すのがいるが、それはもう仕方ないと諦めよう。
ちなみに
だけど彼が帰ってしまったら、また別のチームに面倒を見てもらわないといけないな。
でもあいつは普通の新人とは別格。異次元の強さといっても良い。今のところは大人しいし、言われた事はきちんとこなす。しかも出しゃばらない程度に周囲に気を配入り、言われた以上の事をこなしている。
記憶は無いというが、力や性格、それに生きるための経験はしっかりと残っている訳か。
それと
特にあの中に知り合いがいるわけでは無く、単純に家と大学が近いというだけの赤の他人だったからな。
話しもすんなりと通ったよ。
但し
けど一人だからな。きっちり護衛しながら探索するくらい簡単な事なのだろう。
本人の性格も結構素直で、あれならトラブルも起きないだろう。
彼らが出発後は、召喚者のリストを見ながら次の教官組をどうするか考えていた。
何といっても指導者だし、それに召喚者同士や召喚者と現地人のトラブルを仲裁する必要がある。
そんな訳で、周りから尊敬されるような人間でないとマズイ。
よくある“酒場で飲んだくれて威張っている衛兵”みたいのはダメだ。まああんな典型的なのがいれば逆に分かりやすくて良いんだけどね。
実際にはほとんどが普通の人だ。抜きんでて優秀な人間は少ないし、逆もあんまりいない。
というか、逆はそもそもなかなか生き残らないしな。
そう思うと、本当にもったいないと思うが、約束は約束だ。
それにもう精神的に限界であれば、おかしくなってしまう前に帰す事こそが双方の為だ。
こうして次の候補を決めたら帰還待ち。
一応は
代わりに新人を入れる事になるが、ちょっと渋っているんだよなー。
彼女は彼女で、仲良しグループだけで冒険をしたいタイプだ。
それに長くいるといっても、見た目は中学生集団だしな。新人の高校生や大学生が素直に言う事を聞くとも思えないし、その死を見続けるのも嫌だったんだろう。
そうなると、特定のグループを組まずにヘルプとして好き勝手にやっている8期の5人が良いか。
全員が人格者って訳ではないが、それはそれで大きなトラブルは起こさず、あの反乱にも加わらず、そして残ってくれたわけだ。
よし、戻ったら随時話をしてみよう。
何て考えていたのだが、
いやちょっと待て。
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