第335話 まだ本当に本人なのかは分からないが
出発の場所は、いうまでもなくラーセットの地表にあるセーフゾーン。
今更だけど、みんなここから入って出てくるわけだ。
今回は様子見という事もあって、
「ああ、クロノス様。見送り痛み入ります」
一時期クロノスさんになっていたが、また”様”に戻った。やはり一応、他人の目を気にしての事だろうな。
まだ完全に信頼関係は戻っていないだろうし、どちらかといえばもう戻らないんじゃないかとも感じている。
しかしあの衣装は何だったんだろうな。人類の絶滅に絶望して、世紀末変態パーティーの最中だったのだろうか?
まあ金持ちの考える事はわからん。
「君が新人君だね。私が君たち召喚者のまとめ役をしているクロノスだ。挨拶が遅れて申し訳ない。まだ記憶は戻らないのかい?」
「記憶は戻っていませんが、自然に思い出すだろうと
礼儀正しいなぁ……そうなんだよな、こいつ政治家の息子で金持ちだけあって、外面は凄く良いんだ。
敵と判断すると容赦しないけどな。
「この姿を見ても驚かないのだね」
「聞いていましたので」
以前のクロノスと同じ姿だし、少しは思い出してくれると期待したんだけどな。
仕方ない。
それと同時に、
なにせ今は普通だが、以前が以前だっただけにな。突然あの状態になられたら、相手になる奴は誰もいないだろうし。
「それじゃあ行ってきますわ。行くぞ、
「分かっています。それでは」
「いや待った! あ、いや……名前を思い出したのか?」
そんな訳がないだろうと自分で自分に突っ込んでしまう。
「いいえ、記憶はさっぱりです。ここの人間ではなく日本から来た召喚者とか言われましたが、意味も今一つ分かっていません」
「
「あ、
「それはまあ分かるんだが」
「ほら、こいつ……といっても向こうじゃ俺より年上だったんでしょうが、まあそんな事より肩から脇にかけて大きな傷があるじゃないですか。あれが漢字の八に見えるって話になって、
「名前なんてなんでもいですよ。先に行ってますよ」
そう言うと、他6人と一緒にさっさと行ってしまう。
いや待て、ちょっとヤバい。
あの傷をつけたのは言うまでも無く俺なんですよ、ハイ。
これ記憶が戻ったら、絶対にひと悶着あるぞ。
いやいやいやいや、それ以前に
あのブラッディ・オブ・ザ・ダークネスさん?
彼が
だめだ、まるで関連が想像できない。
だけどちょっと待てよ。
かつての反乱の話を聞いた時、ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスさんは一切関わらず、また理由なんかも知っているのにお咎めなしと聞いている。
ひたちさんは“特殊な人”だと言っていたし、俺もまた”あの容姿だしね”みたいに流した。
だけど
それに、俺が以前のクロノスでは無いように、
つか姿形が今とも違っていたしな。今回も、いつかはああなるのだろうか?
まあすでに歴史の流れは変わっている。確率は低いと思うけどね。
それにしても、当時のダークネスさんは自分が
そしてまた、クロノスが俺だと知っていたのだろうか?
知っていたのだとしたら、どんな気持ちで俺の面倒を見ていてくれていたんだろうな。
ここまで考えて別人だったりしたら、それはそれで笑っておこう。
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