第288話 ちゃんと継承しないといけないんだよな
俺と
今考えても仕方がないが、ちょっと引っかかるな。
「つまりは、こちらでその地球を襲った
「昨日説明した通りだ。俺の行動の全てはそのためにある。奴を倒し、生き残った人たちは安全となった地球に帰す。それで一件落着だ」
「でもクロノス様は帰っても……あれ?」
「新しく召喚された俺だろ。まあ当然、またラーセットに召喚されるだろうな。だけどその点は心配していない。成功さえすれば、その手順を説明するだけだ。毎回酷い目に遭う俺には気の毒だが、その後はクロノスとして色々頑張ってもらうさ」
「じゃあクロノス様は全てが終わっても帰らないんですか?」
「俺が召喚された日に帰っても、そこは人類が絶滅する寸前だよ。そんな時代に戻るなら、ここで死ぬまで生きてやるさ」
「でも大変ですね。新しく召喚されたクロノス様が死んだら、その後は全部滅ぶ結果しかないんですよね? というか、その新しく召喚されてくるクロノス様って何て名前なんですか?」
「それはさすがに秘密だ。俺にもいろいろと考えがあってね」
そう、なぜ前の
それに、他の連中に説明してあったとも思えない。本気で何度も死にかけた――というより、普通だったら死んでいるぞ。
なぜそうしたのかが見えてくるまでは、まだ秘密のままにしておくべきだ。
というよりこの話の流れだと――、
「君たちは……帰らないのかい?」
「滅ぶ世界にですか? ええと……嫌です」
「私も同感。そこが真実なら、今帰るって選択肢は無いでしょ」
「だが、残るという事は他の召喚者を導く仕事をしてもらう必要がある。そして従わない相手は――」
「殺せ、でしょ。その点は出来るかどうか色々考えたけどね。でもやるしかないでしょ? 私らだってまた死にたくはないし」
一晩で、そこまで決意してきたのか。
だが、この決断は軽くはない。その程度の事はわかっているはずだが一応――、
「やる時は躊躇うなよ。スキル同士の戦いは、一瞬でも迷った方の負けだ」
「胆に銘じておきますよ。それじゃあ、改めてよろしくお願いします、クロノス様」
「わ、私もスキルは弱いですが、可能な限り頑張ります」
「ああ、改めてよろしくお願いしよう。だがハッキリ言って、世の中良い事だけじゃない。
悪い事は幾らでもある。いざとなったら、一切遠慮なく俺を頼ってくれ。こちらも戦いと同じだ。決して躊躇するな。少しの遠慮が死につながる世界だからな」
「良い事ばかりじゃないのは……元の世界でも一緒です。特に私は、向こうの方が嫌だった」
「人それぞれ事情はあるって事です。むしろこっち世界の方が、クロノス様っていう強力なスキルと絶対の権力を持っている人がいる分だけマシかもしれませんよ」
「そんな立派なものではないと思うけどね。だけど善処しよう。君達を全面的にサポートする。今後ともよろしく頼む」
「おまかせ……下さい」
「出来る限りの事はやるよ。私だって死にたくはないんだからね」
まだ若い彼女たちだが、実に頼もしい。
始めて召喚されて来た時は本当に子供だなと思ったが、もうそんじょそこらの大人よりしっかりしている。
環境が彼女たちを変えたのだろう。
願わくば、最後まで生き残って欲しいと思う。
※ □ ※
翌日、俺は3庁会議を招集。実際に開かれたのは色々準備があって3日後だが。
というか、俺を含むから実際には4庁会議なんだよな。
議題は当然、召喚の事だ。それもただの召喚ではない。定期的に増やし、限界まで召喚する。
俺の時は50人だったが、今は何人なのだろう? まあやって見れば分かるさ。
ただ大事な会議という事で久々に現場復帰したミーネル、そして軍務庁長官のユンス、内務庁長官ゼルゼナも驚いていた。
何せ今まで消極的で、それぞれをきっちり教育する少数精鋭型を提唱して来たのだ。
ところが今回は逆。とにかく召喚し、ガンガン
当然犠牲は増えるし、その分だけ生贄を必要とするラーセットの負担も増える。
だがそれに関しては約束できる。絶対に、今度の方法の方が豊かになれると。
何せ、多少無茶をさせて犠牲が増えたとしても、召喚者一人の働きは現地人が百人掛かっても敵わない。それだけの差があるんだ。
俺が来た時は戦闘に役に立たないスキル持ちは即帰還というルールであったが、それは当分の間は適用しない。
どんなに弱いスキルであっても、召喚者は召喚者。しかもスキルは成長して変化する。無意味に見えたスキルでっても、変化によってどう変わるか分からない。
しかも生贄まで使うんだ。あんな事をするのなら、少しでも働いてもらうべきだ。
多分だが、あれは俺を追放するために作ったシステムだ。
極限状態に追い込み、俺のスキルを通常で育てるよりも遥かに高みに成長させるために。
ただそれで死んじゃったらどうするのってな話ではあるがね。
多分何か手は打ってあったと思うけど……。
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