第284話 我ながら酷い選択を迫っているな
ゾンビの様に増えるか……全く考えてもいなかったよ。そういえば、ラーセットの記憶はなかったにもかかわらず、どこかに奴らの中心がいると予想していた。
もしかしたら、俺のスキルが意識しないレベルで残っていたのだろうか?
「確かにその可能性はあったな。だけどまあ、どのみちそんな状況だったからね。俺が死ぬのも時間の問題だと思っていた。だけどある日、目覚めたらここに居たんだよ。そこから先はさっき話した通りだ。そんな訳でね、俺の最大の目的は地球を襲った奴を倒す事だ」
「でも――」
「奴らに本体がいる事は確実なんだよ。俺はその事を、
話し終わると、二人は考え込んでいた。
今の話をどう噛み砕いて飲み込んで良いのか全く分からないといった様子だ。
そりゃそうだろうとも思う。俺だって、こんな突拍子もない話を信じろとはなかなか言えないよ。
「あの……二つ質問してよろしいですか?」
大人しく話を聞いていた
そりゃまあなんでも答えるさ。
「なんだい?」
「以前クロノス様が召喚されて、この世界から帰ったのは百年後なんですよね?」
「ああ、大体その位だ」
「クロノス様が最初に召喚されてきた時、トップは誰だったんですか? それと、今の状態だとクロノス様はまた百年後に召喚されて来るんですか?」
いきなり核心に触れてきやがった!
いや、だけど動揺しなければ大丈夫だ。
スキルを制御するアイテムは一人一つ。失われれば神官長が再び呼び出せるが、無くしてしまったらアウト。そして何よりその制限のせいで、俺が持っている以上は高校生の俺に制御アイテムは与えられない。
だけどこの事は誰も知らない。同一人物が存在する可能性がそもそも無いからな。
「ああ。直接会って会話もしたが、特に何も起こらなかったよ。教えてもくれなかった。だけど同一人物がいるという事は色々と混乱を招くからね。そんな訳で、俺が出会った
「なぜそれを今まで話さなかったんですか!?」
言いたい事は俺にだって分かるさ。だけどな――、
「それを話したとして、どれだけの人間が信じたかな。それに向こうに帰れば記憶は全部なくなってしまうとはいえ、こちらで悶々としながら生活することにどれだけの人が耐えられるだろうか。無意味だと分かっていても、心配で帰りたがる人間が続出するだろう。そう考えると、話さない方が良いと判断したんだ」
「じゃあ……どうして私たちには話したんです?」
「これから俺は多くの人間を召喚する。それはラーセットのためであり、同時に地球の為でもある。だけどそれは誰にも話せない事だ。だけど、これから多くの召喚者を呼び出し、ラーセットが発展すれば、そこに理由が必要になる」
「理由ですか?」
「君たちがここまで頑張ってくれたのは、色々な想いがあっての事だと思う。見知らぬ世界だし、そこで死んでも帰るだけ。時間も進んではいない。困っている人々。そういった物を見ながらだ。とても一言で表せる事ではないだろう。だけど、これから召喚者が増えればこの国は大きく変わる。周辺の国よりも発展し、小国ながらどこも無視できない強大な国となる。財産もそうだが戦力としてもね。そうしなければ、地球を襲う
「だけど?」
「そんな状況で、君たちのように働いてくれる人間がどれだけいるだろうか。実は今までは意識してなかっただろうけど、召喚できる数には制限もあるんだ。それに人が増えればトラブルも増える。そうなれば、厳格な対処も必要になるだろう。だから少し酷だとは思うが、今生き残っている君たちには選んで欲しい」
「選ぶ……?」
「もう全てを忘れて帰るか、これから召喚される多くの人間を管理する立場になるかだ」
「今まで通りって訳にはいかないんですか?」
「俺だってそうしたいさ。だけど、状況がそれを許さないと思う。でもまあ、即決即断を迫っているんじゃないよ、結論はその後の様子を見て考えてくれても構わない。とはいっても、召喚者を増やす予定は変えられない。個人的な意見を言わせてもらえれば、新たな召喚者からすれば君たちは大先輩だ。それがいきなり『帰る』と言い出した時の影響は大きいからね。今のうちに決めてもらった方が助かる。それと地球の件は決して他言無用だ。最初の方でも言ったが、無用な混乱を与えるだけの話だからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます