【 共犯者 】

第281話 残った二人の意思を聞いておきたい

 さて、召喚者を増やすと言っても『はいそうですか』と行かないのは今更な話だ。

 先ずは三庁会議を開いて召喚を決める。

 具体的に何人なのかを決めなければ何も始まらない。

 北も南も召喚者を恐れていた。南に関してはほぼ俺のせいだが。

 同様に、ラーセットの人が全て召喚者を受け入れているとは限らない。

 だからいきなり大量にというのは反対も出るだろう。その点もしっかりと考える必要がある。

 そもそも生贄の人数の関係もあるしな。


 だが今は、これらの事は置いておく。先に済ませる事があるんだ。


「ケーシュ、残っている召喚者を全員呼んでくれ」


 と言っても二人しかいない訳なんだけどな。

 俺は2人が落ち着くまでの間、2週間の休養期間を置いた。当然、中学生二人を元の世界へと帰した事も話した。その結果、どんな結論を出したのかも聞きたい。


 ここまでに12人召喚して、生き残ったのは4人。そしてもう2人しか残っていない。

 中学生の2人はどうしようもないから帰って貰ったが、今までだったら殺していたんだろうな。

 あまりにも早いペースだ。それとも、元々こんなもんだったのか?

 だとしたら百年以上の期間でどれほどの命が失われたのだろうか。


 そんな事を考えていたら、ケーシュに連れられて二人の召喚者がやって来た。

 二人とも2回目に召喚した女子高校生。あの大変動を生き延びた猛者だ。

 運が良かったともいうけどな。


 一人は風見絵里奈かざみえりな。愛嬌のある丸眼鏡が特徴で、身長は160センチ程。痩せ型で、胸元は平坦。髪はセミロングで、良くも悪くも普通だ。

 それを気にしているのだろうか、この国特有の高露出の衣装は着ていない。

 元々魔法使いのような三角帽子を持っていたが、今では襟の立った、黒の近い紫のローブまで着ている。趣味だろうか?


 もう10月。肌寒くなってきたから悪くはないが、夏はどうしたんだろう?

 って考えてみたら、その間はずっと迷宮ダンジョン暮らしだったな。

 地下深いわりに迷宮は案外涼しいからアレで良かったんだろう。まあその点は現在の形状にもよるが。

 スキルはコピー。以前は白黒の書き物を複写する程度だったが、今ではカラーの図鑑でも複写できる。

 だからどうしたという感じがあるが……。

 彼女のスキルでこれから生きて行けるのだろうか?


 もう一人は逆に完全な戦闘型。児玉里莉こだまさとりだ。

 風見かざみは一年だったが、こちらは二年。先輩だし戦闘面という特に重要な役割を担っていたが、特に先輩風を吹かすような様子は無い。普段からみんな同等の友達のような関係だった。


 身長は165センチほど。ショートカットだが前髪も同等に長い。ただ眼を隠しているわけでは無く、真ん中から左右に流して止めている。

 少し丸顔である事もあって童顔な感じもあるが、戦士としての経験からかあまり子供っぽさは感じない。

 というか最前線唯一の戦闘要員だったからな。成長は全員の中で最も早かった。

 スキルは物品操作。昔は短剣程度を何本か自在に空中で操れたが、動きとしては単純だった。

 ただ今ではギロチンのような大型の刃2つを個別に操る器用さを見せている。

 しかも20本近いナイフも普段から持ち歩いている。

 それに他の仲間も自分じゃ使わない武器も持っていた。全てを同時には使えないが、それらを自在に操る事で複数の敵でも軽々と葬っていたわけだ。

 地面に散乱している武器のどれがいつ襲ってくるかわからない。相手にはしたくないな。

 似たようなスキル使いのフランソワって教官組と戦った事があるが、厄介さは似たようなものだろう。


「二人とも、よく来てくれたね」


「い、いえ」


「用件は分かります。クロノス様は、どう考えているのですか?」


 まだおどおどしている風見かざみと違っていきなり単刀直入に来たな。まあ児玉こだまらしい。

 分かっていると言われても、俺の心には微妙な迷いはある。果たしでどれを言っているのか。

 だがまあ、ここは勢いだ。


「もし君たちが良ければ、これからもラーセットのために働いてもらいたい」


「嫌だと言ったらどうします?」


「ここまで働いてくれた恩には出来る限り報いたい。そういう事であれば、日本に帰そうと思う」


絵里奈えりなはどうするの?」


「私はまだここに残る。足手まといなのは分かっているけど、それでもまだこの世界に興味があるの」


「それなら私も残る。でも二人だけじゃ、迷宮ダンジョン探索は無理だよ。クロノス様も付いてきて来てくれるなら出来るだろうけど」


「可能な限りはそうしたいけどね。これでも色々とやる事があるんだ。その代わり、召喚者を大幅に増やそうと思う」


「あー、それなら反対だわ。どんな連中が来るのか分からないけど、私たちの様子だと纏まったグループで来るんでしょ?」


 鋭いな、確かにその通りだ。たまに違うのが混ざるが、大抵はある程度近い立場の人間が召喚される。


「そんな状態で、たとえ先に召喚されていたとしても、女子高校生二人の指示に従うと思う?」


 全く、その通りだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る