第270話 何だこの色気は
途中からは馬車での移動となった。
いやいや、電気自動車は? と思ったが、一台も見ていない。まだ導入されていないのか。
そういえば
ただそれが今回の交渉の結果とは限らないし、逆に怒らせて不倶戴天の敵となる可能性だってある。
それに門番を見て改めて思う。召喚者は恐ろしいんだ。いや自業自得を含むけどね。
ただそれだけに、いつ暴発した個人や組織に襲われるかわからない。
決して油断をしてはいけないんだ。
それはそれとして、馬車は狭かったのでぎゅうぎゅう密着して幸せでした、ハイ。
ここまで飛んだ負担は全て回復したよ。
緊張していた彼女らには申し訳ないけどな。
案内されたのは高層ビルではなく、5階程度の建物だ。
上に行くほど小さくなり、ピラミッドというか……段々と上を小さくした菱餅みたいな感じだな。
こういった事務的な建物は、人の出入りが多い場所。おそらくは内務庁って所か。
……という予想通り、ここは内務庁が管轄するビルだった。ただ本庁ではなく、支部の一つ。
正式な会談ではないし、むしろひっそりやりたい内容だ。まあこんなものだろう。
案内された部屋は質素な会議室という感じで、中には10人程の女性が待機していた。
一応壁で遮られた視界を外して周囲も確認するが、武装した兵士がいるような様子はない。
向こうとしても、せっかく大人しい猛獣をわざわざ怒らせる必要は無いって事だな。
「私が今回の
だから一言多いよ。
状況から考えて、向こうも“どう扱ったらいいのか分からない”といった感じと見て良いのだろうか?
召喚者が持つスキルという未知の力。謎の風習。こちらが相手を警戒する様に、向こうも当然警戒している。
新設の閑職という事は、いざという時にはどんな約束でも反故にする気だなこいつら。
ちなみに支部長のウェーハスはかなりの美人。というか、何だろう、ムズムズするような色気を感じる。濃い茶色い髪には薄いウェーブが掛かり、おっとりとした表情から優しそうな印象を受ける。閑職だと言っていたが、召喚者の危険さは知らないわけがない。しかも評判を見る限り、本当に
そんな相手を任されたのだから、当然それなりの能力があるのだろう。
言葉の端々から感じる品の良さが、育ちの良さを表している。案外、結構なお金持ちのお嬢様かもな。
齢は20代前半か。重責を任されるにしては若い。だがこのために何段階もすっ飛ばして出世した訳でもあるまい。元々優秀だったが、扱いには困る何かがあると考えた方がよさそうだ。
服装は今更だがこの子も高露出。
全体の色合いはダークブルーの落ち着いた色調だが、チョーカーから延びたネクタイ状の布が巨大な乳の谷間に隠れている。何と言うか犯罪クラスのサイズだ。
その巨大なものを隠しているのは、両肩から垂れさがる2枚の布だけ。
一応、脇と中央部、それに背中を金のような貴金属の鎖で繋いであるが、ちょっと引っ張ったらポロンと出るぞ、ポロンと。
下は一応、膝丈のスカートを履いているが、白い紐の下着が透けて見えています。
セポナ、ひたちさん、
「こちらこそ、わざわざ会っていただき感謝する。取り敢えず土産に菓子を持って来た。皆で適当に食べてくれ」
「ありがとうございます」
そう言いながら近くの女性に目配せすると、俺が置いた紙袋を奥まで運んでいった。
本当に食べるか捨てるかは五分五分だろう……なんて考えたがどうでもいいな。
「それより、こちらの要求は聞いているかな?」
「我々イェルクリオとの交易に関してですね。ですが、当国はラーセットに対して門戸は開いたままです。今まで通り、何も変わっていないと思いますが」
「確かに今はね。だが召喚者に対する認識に双方変わりはない。北のマージサウル、南のイェルクリオ。今回は先に北が動いたが、北が動かなければ南が動いたのではないか? 北と共闘する気はないが、他の南東諸国の動きが鈍かったから出遅れた――違うかな?」
「さあ、それはどうでしょう」
その微笑から思惑を読み取ることは難しい。
一言多い割に口は堅いのな。
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