第250話 俺と同じ時代から召喚する事は無理か
生粋の軍人っぽいケーシュは忠誠心って感じがするが、ロフレは信奉って感じがするな。
夜も意外な事にロフレの方が積極的だ……ってそんな話は今は良い。ここは執務室だ。
それに肝心な話がまだだ。
「それで俺の時の召喚に関して何か他に知っている事は無いか?」
「それだけです……申し訳ありません」
「神殿庁で聞いた方が早いのではないでしょうか?」
それはそうなのだけど、実際ミーネルと話すのは辛いんだよね。
彼女はそういう風習の中で育ったから、割り切りも早かった。案外そう見えるだけかもしれないけど、とにかく表面上はそうだ。
だけど俺には蜜月だった日々が今も残っているんだよね。というかついさっきまで恋人同士だったと言って良い。会おうとすると胃が痛くなる。
「ああ、そうだ。一つ思い出しました」
「何かあったのか?」
「クロノス様が召喚された時、奇妙な機械を持っていたそうです。確か時計ですね。今の召喚に使っている奴です」
それを聞いてマジでがっくりした。
限定版とは言えそれなりの数はあるだろう。だけどもし召喚の条件が、その時に生き残っていて、なおかつその時間に時計に触っていた人間となると……無いわ。
でもそれで済ませるほど諦めは良くない。いつか試す必要があるだろうが、あの方法は明らかに効率が良くない。それはあの遺体の数に対して召喚されたのが俺一人。しかも俺はクロノスによって、こちらのアイテム……ストレートに言ってしまえばあの時計の針だ。
あれがあったからこそ呼び出されたと考えても良い。
やればやるだけ死人が増えるだけで、完全に無駄になる可能性の方が高い。
これをやるのには、俺の覚悟がまだ足りないな。
そして次に考えなければいけないのは、召喚される人間に法則があるかだ。
これは間違いなくある。なにせ俺が召喚されなければ何も始まらない。代々の俺がクロノスとして行ってきた口伝も残らない。
じゃあ順番は?
まさか召喚者に順番が決められているわけでもあるまい。そうなると、次にいきなり俺が召喚されてくる可能性がある。もしくは
いや、だけどあれは完全に偶然と言って良いのだろうか?
そうではない気もする。なぜなら、ある程度まとまったグループで召喚されているからだ。
もしかしたら、ある程度の法則性があるのではないだろうか?
例えば誰かが召喚されたら、その人と関連のある人が芋づる式に召喚されるとかな。
だけど、召喚者の数にはきっちりとした限界がある。
俺が初めて召喚された時、14人の欠員が出ていた。それで14人だったわけだ。
なら欠員が12人の時に行ったら? 当然2人は召喚されなくなる。逆18だったり20だったりすれば、召喚される人間は増えるわけだ。
そんな事を繰り返すうちに、召喚される人間にも変化が出るのではないだろうか?
実際、俺には過去の記憶がある。そして先代の俺から聞いた口伝がある。
だから、もう前の
大筋は同じかもしれないが、細かくは変わる。というかもう変わっている。
誰が生き延び、誰が死んだか。その後の人生も当然それに応じて変わる。
ああ、そうだ。だから言える。この世界では、100パーセントの確率でセポナは産まれない。
もう俺が、彼女に会う事は2度とないんだ。
一滴の涙がこぼれたが、二人にばれないように涙を外す。
今は、これは俺だけの胸にしまっておかなければいけない事なのだから。
それよりも、話を本筋に戻そう。
変化はあるにせよ、俺が召喚される以上、かつて召喚された人間も召喚される可能性は十分にある。
まあ彼らは俺を知らない。その点は問題ない。
問題なのは、本人が俺が自分だと気が付いてしまう事だ。これが一番まずいだろう。
そういえば、あの時のクロノスの姿は見る事すら出来なかった。
声も違ったし、何処から聞こえてくるのかもわからなかった。
あれは俺も使っていた認識を外すという方法だろう。
だけど召喚者である俺にまであれほど有効だとは……もしあれが殺し合いだったら、死を理解する間もなく終わっていたと思われる。俺も強くなったんだなあ……。
普通だったら、俺が召喚された時――いやもっと前。結局できなかったが、あの3人にも地球の危機を話して協力を仰ぐべきだったんじゃないのか?
まあ99パーセント信じなくとも、心の片隅にそんな話があるのとないのでは微妙に心理状態が変わるはずだ。
でも出来ない。当然俺にもそれは出来ない。
なぜなら、あの時に聞いた口伝があるからだ。
「クロノス様、そろそろお茶を淹れましょうか?」
「ああ、頼む」
考える事はまだまだ山盛りだからな。
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