第248話 もう次を考えなくっちゃな
そんな事を1ヵ月も毎日していると、徐々に後退しては新たな陣地を構築しようとしていた連合軍も遂には瓦解した。
「せいぜい、生きて帰れよ」
逃げ帰っていく軍勢に向けて呟いたが、実際にはどの位が辿り着けるかどうか。
何せ武器や防具、食料や水、工作道具に至るまで、全部頂いてしまったからな。
まあ、全滅だけは避けてくれればいいや。その場合は状況が分からず、すぐに再遠征してきそうだし。
こうして一仕事片付けてロンダピアザに戻ると、大量の荷物が
物は木箱だが、中から強い力を感じる。中身は迷宮産の武具が詰まっているに違いない。
運んでいるのは皆軍人だ。仕切っているのは軍務庁か。
俺は急ぎ、軍務庁の庁舎へと飛んだ。
とはいえ一応は俺も社会人。いきなり長官の部屋に飛んだりはしない。
先ずは入り口でアポを取ったが、すぐに会えることになった。まあ待たされないとは思ったが。
「これはクロノス様。どのようなご用件でしょう?」
「いや、お互い長官って立場なんだしな。様は要らないよ」
「それは申し訳ありませんが出来ません。幾ら当人同士で合意があったとしても、それは他の人からすれば別の話ですから」
そんなもんかねぇ。
まあその辺りはそんなもんだと受け取っておくさ。それよりも――、
「
「そうです。さすがに大国だけあって、階級の高い兵士の多くが装備していました」
「なぜ
いや、彼等が死者の装備を使う事は無い。それが宗教なのか風習なのかは分からないが、とにかくタブーなんだ。
俺達召喚者が集めた武器は貰いつつも本人たちはポイされていたが、あれには罪の意識が――いや待て。最初に3人を召喚した時にミーネルに言わせた言葉、あれを本当に信じている可能性がある。
だとしたら、新たな召喚者を使い捨ての奴隷にしていたのはラーセットの人間じゃない。俺だ。クロノスだ。
頭が痛くなり眩暈がする。だけどまあ、今は置いておこう。頭の中から今の考えを外す。
今は話を聞かないといけないしな。
「この
ああ、セポナが教えてくれえたよ。説明は出来ないけどな。
「実は
「それは初耳だな」
「そうでしたか。クロノス様は何でも存じ上げていると思っていましたが。あ、もしかして私を試していますか?」
「そんな事は無いから続けてくれ」
「はい。力の強い武具などは、やがて浄化されて大変動の時に何処かに出現します。普通の金属は塊となってですね。あ、大変動というのは――」
「いや、その点は知っている」
成る程ね。彼等にとって、これは慰霊の儀式でもあるわけか。そして星の中を通ったものは、死者の物ではなく新たな品となると。
都合の良い話のような気もするが、ダークネスさんも同じ小剣を何本も持っていたし、
見分けがつかないのだから、それはそれで構わないのだろう。
再び同じ物に出会える保障なんてないしな。
こうして近隣の封鎖状況は片が付いた。
復興のための物資も一部だが入手でき、何より薬が手に入った。これが大きい。
これで順風満帆……てなわけにはいかないのが悲しい現実だ。
これから俺は、大きく分けて3つの事をしなければいけない。
先ずは新たな召喚だ。もちろん、前と同じように人と戦わせるつもりは無い。
あくまで
だけど今回は前よりしっかりと教育しなければいけない。出来れば、教官組と呼ばれた連中の様に、後輩の指導が出来るようにまで育てないと困る。
それが軌道に乗れば、ラーセットは当面安全になる。
俺はラーセットが豊かになったから南北の大国が狙っているのだと考えていたが、実際は俺の召喚が全ての原因だったわけだ。
ならむしろ遠慮はいらない。ラーセットには大いに稼ぎ、大いに繁栄してもらおう。
そうでなければ、目的は果たせない。
次が今回戦った国や様子見をした国との外交だ。
そう何度も攻められたらたまったものではない。
これは失敗など許されない。俺が直接行く必要があるだろう。
場合によっては、一国を滅ぼす覚悟でな。なぜなら、次の3番目が一番大きいからだ。
召喚も外交も、全てはそのためと言って良い。
それはこの世界に放たれたあの
この二つが成立しない限り、俺たちに未来はない。
その為には、もっと多くの力が要る。俺一人の力ではどうにもならない。
多くの人を騙し、命を奪う事になる。それはもう、確定事項だ。
だけど、例え俺が地獄に落ちようとも、一人でも多くの命を救って見せる。
その為にやるんだ。
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