第247話 戦利品は素直に貰っておこう
その日から、駐屯地潰しは格段に楽になった。
軍務庁長官ユンスの行為には少し呆れもしたが、実際に必要だったのだから仕方がない。
俺もまた、高校生の頃のようなピュアな心の持ち主ではない事を自覚してしまう。
『あの頃はピュア? どの口で物を言う』
『ただのスケベ』
『へんたーい』
だからお前らは来てからしゃべれ。
とにかく、結構自然な形で女性を受け入れてしまう。
きっと女性の敵とか言われるタイプだと、今更ながらに気が付いたよ。
でもそれもこれも、スキルと環境が悪い。
そうだ――こんな事さえ起きなければ、俺は
一瞬
次の駐屯地が見えてきた。
地図を見ながら潰した駐屯地の位置を確認する。
――やはりな。
綺麗に包囲しているわけではない。結構分散して配置されている。
場所は北と西に大規模な駐屯地が集合し、東から東南にかけてには小さな駐屯地が点在していた。
主力は言うまでもなく北と西だ。
というか、南の大国イェルクリオをはじめとした、南東の国々は参戦していない。
政治的な理由なんて俺には分からないが、様子見といった所だろう。
そんな訳で、南東側の駐屯地は関所みたいなものだろう。
もちろん道などない大自然ではあるが、それでも通りやすい場所と通りにくい場所は存在する。他国へ行くのも命がけだが、一応
そもそも交易があるわけだし。
まあそんなわけで、これのせいで交易が滞っているわけなのでさくっと壊す。
そして宿舎で出迎えてくれる二人の女性と一緒に夜を過ごし、朝食を取り、まるで会社にでも行くかのように出発した。
目的は残っている駐屯地の破壊。うん、我ながら朝の和やかな団欒と比べ、何と物騒な事をしに行くのだろうか。
まあ、可能な限り人は殺さないけどな。
彼等には、ラーセットに手を出す事のリスクを十分に理解して本国に帰ってもらう仕事がある。
今の俺なら全滅させることも可能だろうが、それは単純に敵を増やすだけだ。
ただ連中の執念深さを考えれば、逃してやっても感謝などしない。というか恐怖を伝播させるのが目的だ。感謝されても困る。
そんな訳で、同じような襲撃は1回や2回では済まないかもしれない。先が思いやられる。
ただ予想に反し、俺がこうして駐屯地の破壊をしている間、首都ロンダピアザが襲われる事は無かった。
俺達の世界とは攻撃体系も防御態勢もまるで違う。予想が外れたのはその辺りが関係するのだろうか。
まあ迷宮産の武具は貴重品だとは聞いているが、盟主であるマージサウルという国の部隊は絶対に動くと思っていた。
いや個人で持っている偉そうな奴は何人もいたけどね。ロンダピアザを襲ったような特殊部隊が来ないんだよ。
これはちょっと意外だ。
協力した国が大損害を出しながら、盟主が何もしないでは同盟なんて簡単に瓦解するだろう。
むしろ味方同士で大きな遺恨を残す事になりかねないと思ったのだが……。
そんな疑問もあったが、今は順調な事を喜ぶべきだ。
現在のラーセットは、国家を運営するために必要な要素が何もかも不足している。
働き、増やし、国家の運営を担うべき国民。国民を養うための物資。破壊された首都を再建するための資材。攻撃された時に、自分たちで身を護れるだけの戦力。そして経済や軍事面で協力してくれる味方。
人口は時間に解決してもらうしかない。
幸いそれが分かっているからか、今ラーセットでは空前の婚姻ブームだそうだ。
神殿でお世話になった女の子たちも、次々と結婚していった。
余談だが、神殿関係者は完全に女性上位。結婚は婿入りの形で行われ、正式な神官に成れるのは女性だけ。男性は司祭が限界で、そうでなければ一般職に就くそうだ。
それ程重要な役割なのだから、ミーネルの判断は当然だったと言えるのだろう。
俺としては、全員を覚えているだけに悔しさでいっぱいだけどな。
話しが逸れたが、破壊されて無人となった駐屯地の物資はラーセットの人々で回収した。
個人が使っていた物を使う事には抵抗があるようだが、国として管理していた資材なんかを頂く分には全く抵抗が無いらしい。
特に薬はありがたかった。戦闘に来たのだからあるとは思っていたが予想以上の数だ。
相当に豊かな国なのだろう。なにはともあれ、これで多くの人を救う事が出来る。
彼らには悪いが、攻めて来てくれてありがとうだ。
とはいっても、さすがに戦乱の被害が大きすぎて全ての重症者をや障害者を治すには至らない。これでもまだまだ足りないわけだ。だけど、0に比べれば遥かにマシだよ。
相変わらず、俺は治療に携わっている余裕は全くないからな。
というか、俺の医学知識より迷宮産の
本来なら超高価な機器を使って大人数でやる大手術が、薬一本で治ってしまうのだから大したものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます