第215話 結局こうするしかなかったんだよ
瞳で強く光りっぱなしの紋章も気になる。まあこの戦闘中にスキルを止めるなんて自殺行為だろうが、何時からだったんだろう。
そう考えた瞬間、寒気が走る。直感と言っても良かったかもしれない。
「お前、何時からスキルを使い続けているんだ?」
「ああ……誰かが同じ事を聞いたな。どっちだったか……両方殺したから分からないな」
やはりという感情しかなかった。ここに
だけど、心の底では無事であることを祈っていた。信じていたといってもいい。
あの二人が、そう簡単に死ぬ訳がないじゃないかと。
「安心しろ、お前も殺す。そこの女も、この世界の人間も、
「……お前の世界には、もう先輩はいないのか」
「先輩……誰だ? いや、いい。お前は殺す」
とても避けられる速度じゃなかったが、避ける気もあまりなかった。
そのまま首筋に食らいつき、肉を抉る。
「なあ……お前は誰だ?」
首から噴き出す鮮血も気にせずに、俺は
だが、何も判らないといった虚ろな目がその答えだった。
戦いが始まった時は――いや、今と似たようなものだったな。ただその前に
色々と限界が来ていたんだろう。
「なあ、
残った左手で、
「もっと話したかったよ。色々とごめんな。どんなに後悔しても、もうあの時は戻らない。でもそれはお前も同じだ。もうやってしまった事は戻せない。だからこうするんだ。悔しいなら、幾らでも恨んでくれ」
ゆっくりと、
普通だったら出来ないだろうけど、ここまで心が壊れていると、そんなに難しくは無かった。
まるであの召喚システムとやらがあった時のように、
「こ……ろ……す……・」
「そうだな……いつかまた戦おう」
消える瞬間、龍平は笑っている様に感じた。
最初の張り付いたような不気味な笑みではなく、昔見たような、微笑みで。
「やはり、結局はこうなったか」
聞き慣れない声が響く。人ではないような異質な声。
「誰だ? 随分と知ったような口を叩くが、今の俺は機嫌が悪いんだ。用があるのなら、さっさと姿を現せ!」
「現してはいるさ。ただ認識しにくいだけだ」
感覚を研ぎ澄まし、集中する。
いる――確かに、それも目の前に。
「やはりという事は、こうなると知っていたという事か」
「そうだな。知っていたといえば知っていたし、知らなかったといえば知らなかった。茶化しているわけでも誤魔化しているわけでもない。
「ならどうして止めなかった?」
きっとこいつなら、あの戦いを止められた。
それどころか、俺と
教官組じゃない。姿も声も認識できないが、こいつから感じる力は到底人知の及ぶところじゃない。
「止めようとは思ったさ。何度もね。見ていて辛かった……本当だ。だけどね、実感がわかなかったんだ。まるで映画のワンシーンを見ているような、そんな気分だった」
「俺たちの戦いは、いい見世物だったわけだ」
「言葉が悪くてすまない。だけど、あそこで俺が止めても本質は何も解決しない。正直に言えば、これまで何度もお前を始末しようと思った。これから起きる出来事を考えたら、初日に始末するのが一番だったとさえ、今でも思っているよ」
――起きる出来事? 起こしたじゃなくて?
「だけど、多分それだと何も変わらない。確かにそれもまた一つの結末だが、その名の通り全ての終わりだ。俺にはそんな選択は出来ない。だから期待したんだが、ダメだったようだ。だが……そうだな。いつか必ず、本当の意味での終止符が打てる。そんな気がするんだ」
「……名を聞いておこうか?」
聞くまでもなく、本能がその名前を告げていた。
「クロノス。ここではそう名乗っているよ」
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