第213話 結局戦う事になるのか
夜が明ける頃には、幾つもの高層ビルが倒壊し、地震のような振動と共に台風のような突風がショットガンの様に破片を撒き散らす。
その中には、子供がいたビルもあった。あの時登ったビルだ。
それだけ守備隊が減ったという事なのだろうが、あのビルの破壊は容易じゃない。
博物館に集まっていた
それでも今は進むしかない。
倒壊した瓦礫の山を進み、燃える街の炎と煙の中を突き進む。
熱も煙も視界の悪さも外す。もう大盤振る舞いだ。ここでケチって良い事など何もない。
段々と近づいてくる感触がある。ここまで来たら、あと少しだ。
「後ろ!」
同時に、自分に対する全ての物を外す。それが何であってもだ。まあ、良い物が来るなんて思っちゃいないがな。
飛んできたのは巨大なハンマーだった。かなりの高速で、まるでカタパルトか何かで射出したかのようだ。
だが相当遠くからだったのだろう。元々狙いが甘い事もあって、軌道を外す事は簡単だ。直撃していたら確実に死んでいたけどな。
それにしても、今これからって時にタイミングよく現れてくれるものだ。お前がこの
炎と煙に霞ながら、ここより少し高い瓦礫の上に
だがおかしい――その違いはすぐに分かった。人の表情をしていないのだ。
張り付いたような狂気に満ちた笑み。そのくせ無表情な瞳。その中にある輝きはスキルを使っていることを現している。
だが、まるでガラス玉のように感情を感じさせない瞳のせいで、まるで人工物かのように思ってしまう。
「けいいちぃー!」
「
後ろ手に放るように、背負っていた
いや、本当に助かったよ。その瞬間にはもう、
響く轟音と共に、足元の地面が陥没する。俺も
スキルで外したつもりだが、ずらせたのは1センチ程度か。やはり召喚者相手では利きが悪いな。
だが効果はあった。もし全力なら――そう考えた時、体の数か所に痛みを感じる。
なんだ?
「
「うるさい女だ!」
いや、そんな事は後だな。
目にも止まらぬ速さで
あいつほどの速さは無いが、俺の方が近かったのが幸いした。
だが、いとも簡単に避けられる。俺の剣が触れるよりも早く20メートルはバックジャンプしていたのだ。やっぱり早い。
「あいつは危険だ。もっと下がっていてくれ」
「そんな事より、大丈夫なの!?」
ここで初めて、俺の体に何本ものナイフが刺さっている事に気が付いた。
その内一本は喉を、もう一本は右胸を貫いている。他にも致命傷ではないが、肩やら足やら何本も。
おそらくあいつが降って来たのを避けた時だ。痛みを感じたが、なるほどねぇ……で済ませてしまうのは我ながらちょっと怖い。
今の威力、速さに加え、こういった小技も使う、まあ普通の人間なら小技どころか致命的な一撃だけどね。
だけど俺も2年前よりは強くなっているんだ。
刺さったナイフを外す。一本ずつ手で抜くのではなく、外すんだ。
まるで支えも何も無いように、ポロポロと勝手にナイフは抜け落ちキンキンと音を鳴らす。
ふと見れば、こいつは現地の普通の兵士が使っているような一般品だ。迷宮産じゃない。
避けようと思えば、多分当たりもしなかったな。
まあ視えなかったのだからどうしようもないが、次からは事前に注意しておこう。
「器用なものだな。そうやって生き延びてきたのか。とても人間とは思えないな」
「まあな……お前も随分と変わったじゃないか。以前はもう少し、人間らしい表情をしていたぞ」
「お前を殺せば、きっと戻るさ」
張り付いたような笑顔のまま、まるでイノシシのように突進してくる。
だが攻撃はそう単純ではない。
フェイントを入れつつ拳、更に足。隙を見せれば関節技で手を折りに来る。
しかもほとんど
教官の一人を倒したと聞いた時点で戦いたくないなと思っていたが、実際本気で戦いたくなかったよ。
だけどな、
全部自分の意志でスキルを使いこなしているんだよ。
なのになんだよ、お前は。確かに強くなっているのに、あの時よりも弱くなっているじゃないか。
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