第204話 龍平の武器
だが斬れない。まるで鈍器で殴られた様に首はへし折れたが、切断には至らない。
吹き飛ばされた体はトラックに跳ねられたかのように何度も地面でバウンドする――が、途中でくるりとバク転すると、何事も無かったかのように着地する。
その首は、もう折れてはいなかった。
逆に、切りつけたダークネスの長剣に深い亀裂が入る。これはもうダメだろう。
今まで使っていた剣を捨てると、双子が何処から出したのか予備の剣を渡す。
そこでようやく、気がついた。ダークネスの額に、深々とナイフが刺さっているのを。
「ダークネス様」
「額に――」
「分かっている。この程度の事で、我がどうにかなるものではない」
「
ナイフなどどうでもいいとばかりに
「おやおや、言っても良いのか?」
見れば、いつの間にか両手には
「お前のスキルは肉体強化であろう。当然、通信機の声も聞こえていたはずだ。隠すことに意味はあるのかね?」
「ないな。どちらにしろ、お前たちが死ぬ事も、俺が
最初に攻撃されたのはダークネスであった。
だがダークネスも歴戦の猛者だ。その攻撃は易々と長剣で受ける――が、同時に空中で放った胴への回し蹴りが炸裂。鐘を叩いたような鈍い金属音と共に、馬から吹きとばされた。
だが
「やれやれ」
サングラスをクイッと上げると同時に、撒き上がった砂塵が長いダガーの柵を作る。
当然そんなもの効きはしない。まるで砂細工を壊すように一振りで粉砕するが、その肩に、腕に、胸に、腰に、水銀性のダガーが命中する。
砂塵に紛れて飛ばしてあったのだ。
だが効かない。この程度の金属では、もはや
それに最初に手を貫いた穴も、ダークネスが折った首も、既に元通りだ。
「随分と良い薬を手に入れたようだな」
「
「自分の女を差し出した報酬としてもらったものだからかね。実にあさましい男だ」
無言で斬りかかってくる
ただここまで強化されると、それはもう小細工無用の絶対的な暴力だ。
だが、
刀身はいつの間にか、あらぬ方向へと飛んでいた。
「やはり武器の扱いには慣れていないな。素手の方が強かったのではないかね」
目にも止まらぬ速さで振り下ろされた軌道には、
後は自分の力で、本人すら気がつかぬほど易々と砕いたのだ。
だが
――あと3回と言ったところかね。
内臓は破裂、背骨も砕かれ
当然ながら薬は使ってある。それも即効性の物だ。だがここまでの重傷を治せるものは、後3回分しかない。
そのまま着地した目の前には、再び
その形相は悪鬼そのもの。だが張り付いたような笑みは仮面の様だ。今の
――知りたいとも思わぬがね。
その龍平に向け、横合いから黒い影が飛び込んだ。ダークネスが騎乗していた馬だ。
だが当たらない。正確には
「すまぬな」
「ブリキ人形風情が!」
既に最初の攻撃で腹には穴が開き、中の空洞が見える。
そして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます