第192話 それぞれの出発
「貴方は支度しなくても良いの?」
「我に、今更支度など必要あるまい」
「確かにそうかもしれないわね……ねえ、覚えている? 貴方が召喚された時の事を」
「そんな昔の事、もうとうに忘れておるな」
「私にとってはついさっきの事よ。あんなに驚いたクロノスを見たのは、あの時が初めてだったわ。あの時から、貴方は
「昔の話だ。もう戻らない過去だ。覚えてもおらぬし、思い出す必要もない。それで良いではないか。我はただの意思の塊なのであるのだからな」
「ダークネス様」
「行かれるのですか?」
今まで沈黙したまま控えていた双子が口を出す。
珍しい事だと
ましてや
「ねえ、ブラッディ・オブ・ザ・ダークネス。貴方はちゃんと戻って来るのよね?」
「それは分からぬ。未来など誰にも分かるものではない。だが奴の言った期限とは、まさに今この時だろう。奴は知っていたのだよ。この事態を全てな。ならば、それに応えてやろうではないか」
そう言って出て行ったダークネスの背中を見ながら、戻って来る事を心の中で祈っていた。
こうして俺達は南方にあるという大国、イェルクリオへと出発した。
俺達一行はひたちさんにセポナ、
それに今回は
全部で10人。まあ双子を人数に入れて良いのかは不明だが。
他はお留守番。と言うか、
それに
★ ☆ ★
ロンダピアザのある召喚庁。その執務室にはクロノス他、最高位の3人が揃っていた。
今回の事で、ラーセットは未曽有の混乱の中にあった。なにせ世界中の国を滅ぼしている伝説級の
この国はかつてクロノスの力で撃退しているとはいえ、今度も大丈夫だとは限らない。
人々の不安は余計な憶測を生み、祈る者、戦いに志願する者、バリケードを作る者、他の国のツテを頼って脱出を試みる者などで、街中は大騒ぎだ。
ニュースも連日連夜、この話を延々と放送している。
「状況はどうなっている?」
「先行隊として召喚者のチームを3つ行かせた。ほぼ全員だな。それに教官組からは
「あの二人は教官組でも最速だからな。まあ適任か」
「他の教官組4人も全員イェルクリオに向かう
「ああ……それで良い。では俺も行くとするよ。ラーセットの事は君らに任せる」
「一時的によね。悪いけど、貴方がいなくなるのなら、もうこの国に用は無いわ」
「私もそうしよう。国を離れ、少し旅に出るよ。この世界を見て回りたいんだ。世界中にあるという、召喚者の痕跡も見てみたいしね。だけど何かあったら必ず戻ってこの国を守る。約束しよう」
「お前はどうするんだ?」
「自分は残るよ。責任……という訳でもないが、きちんと管理しないといけないしな。それに自分がいなくなったら、お前は心配で何も出来なくなりそうだしな」
「俺が戻って来ない前提で話すなよ、酷い連中だな。だけど大丈夫だ、俺は必ず戻って来る。それが――俺かは分からないけどな」
「お前はお前だ。まあ後の事は任せろ。先ずは、奴との決着をつける方が先だろう」
「そうだな。それが俺の最初の仕事だった。では、残してしまった宿題を終わらせてこよう」
こうして、ラーセットからもイェルクリオへ向けて出発した。
召喚者の他、6人の教官組。多数の現地人。そして最高司令官であるクロノスもまた、様々な想いを胸に旅立った。
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