第191話 もしかしたらチャンスがあるかもしれない
だけど、それがどんなものかを知らなければ戦いようもないわけで。
「ダークネスさんは見ているんですよね? 何か事情があるみたいですが、どんな
「そんな都合の良いものは無い。先に言っておくが勝つ手段など無い」
「それは見てから考えます」
「お主はそういった人間であったな。だが残念ながら本体は知らぬ。故に、その姿は不明だ」
「知っている事だけでいいんです」
「……群れを成し、人を襲う。理由はわからぬ。ただ
あの黒竜はどんな奴かを知っている様だった……けどだからどうしたと言った感じか。次の大変動で復活するのだろうが、それを待っている時間も無ければ探している暇もない。
「そしてその
「それに寄生されるとどうなるんです?」
まあ結果自体は聞くまでも無いが――、
「背中から、その生物の上半身が生えてくる。青白く、無表情でな。そして人でもなんでも襲い喰らうのだ。そこから更に増える事が無いのは不幸中の幸いではあるな」
「想像しただけで怖いね」
「ちょっと待って、それって近づくだけで寄生されちゃうの? だとしたら、いくらなんでも
「わたくしも
言いたい事は俺にもよく分かっているさ。それに、今回が特殊な状況だって事はよく分かっている。
本体が分からず、何らかの手段で増殖する。それが今、ラーセットよりも大きい国を飲み込もうとしている。
イェルクリオが自分達を神罰で消し去って欲しいというのは、せめて他に被害を出さないためだろう。
立派な行為と意思だ。俺に邪魔をする資格はない。そんな奴を放置できないというのは俺だって同じ意見だ。
だけど、それでも俺にだって意地はある。
「その
「お主一人で行かせると思うのか? お前を慕う者達を巻き込む事、承知しているのであろうな?」
ダークネスさんの言葉に間違いはない。
俺一人で行く事など出来ない。というか、スキルのせいでそれは無理だ。
くそ、制御アイテムが欲しい。
「分かった。だけど見に行く事だけは許してくれ。もしラーセットの作戦が失敗したら、そんな奴が野放しになる。それはいずれ俺達にも関係してくるだろう。その時に、どんな連中がどうやって襲ってくるのかも分からないんじゃ最悪だ」
「それは私も賛成ね。ラーセットと距離を置いたとはいえ、結局は私達も彼らと協力関係にある事には間違いないわ」
「僕も賛成だ。あの国と取引が無ければ物資にも事欠くのは事実だしね。それ以前に、次に向かう先がラーセットとは限らない」
「こちらに来るかもって事?」
「当然その可能性はある。ただもちろん戦えるわけが無いよ。相手は国を亡ぼす
「なら決まりで良いですね。ダークネスさんもそれで良いですよね?」
「これが正しいのかなど、誰にも分かりはすまい。だが――いや、我も行こう。この身には、もはや奴らの寄生は効かぬ」
それが何を意味するのかは聞けなかったが、出発の許可が出たことは確かだ。
なら、気が変わらないうちに早い処出発しよう。研究も行き詰ってしまったしな。
それにみんなには内緒だけど、俺は自分自身でそいつを倒すことを諦めちゃいない。
そして何より、
当然ながら、
だけどその後なら? 破壊した街の様子を見るために――本体の死を確認するために――増えたという残党
当然だな、俺はロンダピアザには行けなかったのだから。
だけどそんな事は、連れ去ってから考えればいい。そう、今度は先輩の時とは違う。必ず抵抗される。『来てください』では通じないだろう。
でもやるしかない。こんな機会は、そうそうないんだ。
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