第144話 やはり召喚者同士で戦う日が来たか
茂み――とはいえ、この辺りは巨木も多い。
それに腰まである草が邪魔で、動くのはなかなかにしんどい。
しかも相変わらず矢も飛んで来る。形状と角度からしてボウガンか。
まあ勝つか負けるか分からない近接格闘よりも確実だしな。だけど――、
視界から邪魔な茂みを外す。そうすれば、隠れている連中は丸見えだ。
確かに飛び道具は強力だ。だけどこんな所で使うにはあまりにも不向き。
狙うのもそうだが、敵味方の識別もしなくちゃいけない。そんな訳で距離はせいぜい10メートル程。俺のスキルにとっては0距離と変わらない。
相手が驚く前に、ボウガンに新たな矢をつがえていた男の首が飛んだ。
殺さなくても良かったのだろうか? 心のどこかでもそんな事を考える。
だけどそれは、いつも全てが終わってからだ。今の俺の心には虚無感しかない。後悔も罪悪感も同胞意識も、全て外してあるからだ。
周りを囲んでいる連中が何か叫んでいる。だけど言葉は通じない。
剣の切っ先を向けて突っ込んで来る男。槍を構える女。その後ろで弓に矢をつがえようとしてとしているのも女か。意外と女性も戦場に来るんだな。
そんな事を考えながらも、俺は三人とも葬っていた。
「すごいね……でもやっぱり、戦う時は雰囲気が違うね」
「そうだな。俺のスキルは話したと思うけど――」
「うん、聞いたけど。やっぱり実際に見ると凄いよ」
その凄いとは、どっちの意味なのか。すごく強いのか、それともすごく人でなしなのか……。
彼女と肌を合わせた時、俺もまた彼女に自分のスキルを話した。元々隠す予定もなかったし。
ただ予想はしていたが、半分も理解していなかったと思う。大体説明した俺が理解していないのだから当然と言える。
一応、便利だけど万能じゃないのと味方を巻き込まない事――それに、
両手に半月刀を持った少女が木の上から飛び降りて襲い掛かってくる。いや、過去形だな。
美しく輝く二本の剣が背後から俺の背中を一直線に斬り裂いた。
だけど言うまでもない。本体をこんな簡単に斬らせるものか。
外してあった偽物の体は消え、本物の体はくるりと振り向むくと、そのまま攻撃者の胴を切り裂いた。
それは、身長150センチ程度。迷彩が施された全身ローブに身を包んだ少女だった。鮮やかなブルーの髪で片目を隠しているが、驚愕に見開かれたその紺の瞳が俺の胸を刺す。
小柄で可愛らしい子だった。もしこんな状況で出会わなければ、何をされたって手を上げたりなんてするものか。
だけど今はちょっとの後悔で済む。余計な心は外しているからな。
とはいっても、完全に殺人ロボットの様にはなれない。これは俺のスキルがまだ未熟なのか、それとも最後の一線を外せないのか……まあその点はどちらでも良いだろう。
だけどおもいっきり引かれているよな。自分でも分かる。本当なら、もっと躊躇するものだ。
この戦いが終わったら、いきなり別れ話を切り出されるかもしれない。そんな先の事を考えていた俺達の目の前で、いきなり火球が炸裂した。
まさに大爆発と言って良い。巨大に膨らんだ真っ赤な炎は轟音を響かせながら炸裂し、周囲の木や草を薙ぎ払った。
その境界線が分からない以上、無理は出来ない。
とはいっても、じゃあスキル攻撃自体を外す事が出来るかといえば出来なかったりする。結構不便。
でも今回は幸いだ。爆発させるまでがスキルで、爆風自体は自然現象だったからな。これなら外すのはさほど難しくはない。
炸裂する前に一瞬見えた小さな火種。あれの直撃を喰らわなければ何とかなるだろう。
問題は――、
周囲が吹き飛んで少し視界が開けた俺達の前に、2人の男が現れた。
正しくは粛清部隊とかいう現地人の兵士も結構いるが、こいつらはどうでも良い。
いや何を持っているのか分からない以上無視は出来ないが、
「あれで死なない程度の
「久しぶりだな、
どう見ても敵意剥き出しの召喚者の方が問題だよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます