第115話 完全にフラグだった
白く輝く美しい迷宮。とても自然にできたとは思えない不自然さだ。
「まあぼさっと見ていても仕方がない。ささっと穴を開けるか」
開けた先もまた袋小路という可能性もある。出来れば別のセーフゾーンへと続くという本筋の部分に繋げたいところではあるが、多分それは次点。
最良は十分に採掘できるだけの広さを持ちながら、ラーセットの
そんな所があるのかって? いや小さいのなら目の前にあるじゃないか。
これのもっと大きな部分へと掘り進めばいい。
ただ当然ながら、難易度が高くなればなるほどに危険も増す。それは
「もし難しすぎて心に負担が出るようでしたら、いつでも言ってくださいね」
そういって、セポナが俺の袖を引っ張ると、もう片方の親指で自分の白いワンピースの胸元をくいっと広げて見せた。
うん、下は何もつけていない。完璧だ。
それじゃ、ちゃっちゃとやってしまうとしよう。いや、穴掘りの方をだよ。
結合を外し、ガラガラと壁が崩れていく。方向はこれであっているはずだ。
方向は少し斜め下。距離は600メートルくらいだろうか。こうして綺麗なトンネルが出来上がったわけだ。
個人的な
というか、瓦礫を埋めるだけ下も崩しているから、見た目以上に壊したな。
「これで多分大丈夫だと思うが、ちょいと見るだけ見てこよう」
「
まだセポナは銀色の何かが気になって仕方がないらしい。
「帰りに掘ってやるよ」
そういって、俺達は
緩やかな斜面を下った先は、やはり同じような白い
実に美しいが、ランダムに生えている柱や階段が実にシュールだ。
それにもう予想はしていたが、
つまりは、ラーセットや他の国の人間も、今頃は俺と同じ白い
まあ様式が統一されていないと、何処がセーフゾーンかの判断も出来ないからな。
「ねえねえ、あれは何でしょう? やっぱり銀色ですよ! 掘り出しましょうよ!」
「一応聞きたいんだが、この世界って銀は価値がある物なのか?」
「そりゃありますよ。まあ召喚者の方々からすれば重い割にたいしたお金にはならないかもしれませんが、わたしたち庶民にはギリギリ手の届く範囲の最高級品ですからね」
「なるほどねー」
そういや貴金属なんてのには、召喚者はあまり価値を見出さないって聞いていたな。
大抵は
そう考えると、召喚者ってかなりの金持ちなんだろうな。
それに国家から身分も保証され、特別な待遇も受けているだろう。中身は自分達の危険を肩代わりして働いてくれる便利な家畜だとしても、その生活は決して不快なものではないという訳か。
ふと、横にいるセポナの事を思う。俺は彼女に、ちゃんとした幸せを与えられているのだろうかと。
でもまあ、召喚者の優雅な生活って言うのも成功すればだろうけどな。
失敗を繰り返せば、いくら召喚者とはいえ貧乏生活だ。それに死の危険もある。トラウマになったりしてもう潜れない者は……ああ、考えるまでもない。今までは元の世界に帰っていたんだな、名目上は。実際は芋虫の餌だが。
だけどこれからはそうもいかない。どれほど恐ろしくても、苦しくても、辛くても、潜らなければいけない。
「なあ、俺のしたことは――」
正しかったのだろうか? そう言いかけてやめた。
世界は嘘で満ちている。それは元の世界だってそうだ。
だけどここの嘘は酷い。到底、納得できるものじゃなかったんだ。
なら……何が正解だったんだろう。もちろん召喚しない事が一番なのだろうが、それはこのラーセットという国の人間にとって……。
「キャー!」
うだうだと今更な事を考えこんでいたら、白い
いつの間にか、彼女は銀の塊の所に移動していた。どうにか一部でも取れないかとでも思ったのだろう。
だがそれは罠だった。
柱の一本が、黒い粒々が無数に入ったゼリー状の
スライム? いや、それよりも遥かに高度な生き物だ。
体の一部を触手の様にセポナに巻きつけると、そのままもの凄い勢いで
いやいや、消えていくじゃねーよ! あいつが死ぬと、俺も死ぬんだぞ!
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