第113話 どうせ行くなら行くのは今だな
「大変動の直前に俺は二人の召喚者を殺した。知っているか?」
「そりゃ勿論」
「だが話は聞いていると思うが、死ぬと送られる場所には更に二人の遺体があった。タイミング的には大変動からさほど間が無いはずだ。まだモンスターが出る前だし、大変動が原因だと思っていたんだが……あの二人の死因は把握しているか?」
「いえ、さすがにそこまでは。ただ名前は分かっていますよ。ええと――」
そう言いながらズボンのポケットからメモを取り出す。相当に使い込まれているらしく、大昔の映画に出てくる刑事の手帳みたいだ。
「一人は
その言葉に、俺は愕然となった。
言葉が出なくなり、一瞬この世の全てが消えたかのように錯覚した。
だけどすぐに戻る。何よりも大切な事が、俺の脳を刺したからだ。
「そのチームに、
「ええと――ああ、いますね。会った事はありませんが、相当な美人で巨……あっと、そういえば知り合いでしたか」
「いや、構わないよ。それとありがとう。これで俺の次の目的がはっきりと決まったよ」
「それは危険すぎます」
「まだ何も言っていないぞ」
「言わなくても分かります。ラーセットに戻るのでしょう?」
まあ、そりゃ分かるよな。今の話から、飯でも食いに行こうとかは無いわ。
だけど行かなくちゃいけないだろう。
その
皆には悪いが、今の俺の最大の使命は
だけど、今動くわけにはいかなかった。
動くべき方針も作戦も無い。ただがむしゃらに会いに行った結果があの惨劇だと考えれば慎重にもなる。
けれど今の情報は、そんな慎重さを吹き飛ばすに十分な話だったんだよ。
そのリーダーとやらが死んだ後、
それは、絶対に違う。断言できる。あいつは最初から
ああ、そんな事は最初から分かっていたさ。ただ考えないようにしていたんだ。アイツはその時何をしていたのかを。もしかしたら、6人の中の一人は……。
「その時のチーム構成を、紙にでも書いておいてくれ。聞いても忘れてしまうかもしれないからな」
「それは構いませんが、皆さんどう言いますかね。何せ来たばかりでしょう? 今は出かけていますが、会いたがっている人も多いんですよ」
「地下で出会った奴の言葉じゃないが、ちょっとした賭けだよ。場合によってはすぐに戻って来る」
「
さらりと凄いことを言うなー。
「何をしようと考えたのかは教えて頂けますよね?」
ニッコリとしていておしとやか。だけど有無を言わさぬ迫力でひたちさんがじりじりと近づいて来る。怖い、ちょっと怖いです。
「先ほど名前が出た
「そんな事は分かっております。まさか本当にそれだけですか?」
にっこり微笑みながらキョロキョロとし、鞭を確認して視線が止まる。それは一瞬の事ですぐにこちらを見たが、考えた事はわかります、ハイ。
止めてください。あれ本当に痛そうなんです。
「参考までに、詳しい話を聞かせてくれるかい? 君の事情は聴いているが、それだけに今行って何か出来るとは思えない」
あーこっちの人も興味津々か。分かるけどね。
確かに時計の謎が昨日の今日で解明できるわけがない。説得材料もないし、話せる内容も世間話位なものだろう。
だけど――、
「これは俺の勘でしかないが、会わないといけない気がするんだ。いや、それだけじゃない。連れて帰る……どんな妨害があってもな」
「
「ですか?」
「それが出来るかは別問題だと存じ上げます」
そういうと右手を横に伸ばす。ささっとその手に、セポナが彼女の鞭を握らせた。
何というコンビネーション! いつの間にかそこまで阿吽の呼吸が――って違う!
「まあ待ってくれ。勝算はあるし――いや、失敗の可能性もあるしというか高いけど、その時はほら、素直に引き返して別の策を講じるよ。だけど、今が間違いなく最大の
「ではその計画をお話ください。頭から反対は致しませんし、
そう思うなら鞭はやめてください。
とにかく一度落ち着いて貰ってから、俺は思いついた計画の全貌を説明する事になった。
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