第41話 今更だけど毒があったのか

 懐中電灯の事など細かく聞いても仕方がない。

 俺達はつるつると滑る丸い洞窟を慎重に進みながら、もっと大事な事を聞いていた。

 ただ進むというより、これはもうウォータースライダーだ。

 一度滑ったが最後、止まるまで螺旋状の洞窟をひたすら落ちる羽目になる。

 これ、最後登れない場所に落ちたらゲーム―オーバーなんじゃないだろうか。

 今更だが、それは死を意味する。


「それで、今まで俺に話した内容に嘘は無いだろうな?」


 かなり滑り落ちた先。ちょっとした窪みのような場所で俺達は止まっていた。

 もうどこが何処なのかも分からない。そもそも、こんな足場の悪い場所でモンスターに出会ったら終わりじゃないのか?

 まあその時はその時か……。


「もちろん、嘘なんてついていませんよ。何せどんなスキル持ちかも分からないですし、こちらの命も賭かっていましたからね」


 確かに道理だが、あの契約書の部分だけは怖かった。

 何せこちらが絶対服従の永続奴隷になる契約書かもしれなかったからな。

 ただ同時に、それは無いなとも思っていた。セポナの言葉を完全に信じていたわけではないが、実際に召喚者は自由に行動していたのだしな。


「次の大変動までの間隔は? 時計みたいのがあるって事は、一定期間でやって来るのか?」


「あれは迷宮に貯まった変動エネルギーを計測する装置です。大変動が近い事はわかりますが、正確な期間は分かりませんよ。1時間後かもしれませんし、3か月くらい空くかもしれません」


「ちなみに今までの最短と最長は?」


「最短は数回連続。最長は1年半くらいですね。わたしの記憶によると、ですが」


 まあ細かな点は良いよ。

 だが、こうして迷宮にいると言う事がもう危険。観測機らしいのも壊れてしまったしな。

 とはいえ、仮にあの観測機が無事だったとしても、あれは一人で運べるサイズじゃない。

 それに再び大変動が近いとなった時、俺達はセーフゾーンまで逃げ切れるだろうか?

 もし連続なんて事態だったら100パーセント不可能。気付いた時にはもう遅い。まるで神の気まぐれのように、ただの運で死ぬわけか。

 これは確かに攻略するのは難しい。それに相当な恐怖もあるはずだ。


「確かに使い捨て出来る召喚者は便利かもな」


「言葉は悪いですが、本当に死ぬわけではありませんしね。正直言えば羨ましいです」


「そうだな」


 それが真実かどうかを断言するだけの材料は、まだ俺の手元には無い。

 これはシステムの根幹を成すような情報だ。現在の知識だけでは足りないだろう。

 それを暴く……出来るのか、俺に?

 弱気にもなるが、今はただそうも言ってはいられない。


「まあいい、休息しよう。一度まとめて聞きたい事があったんだ。丁度そこにダンゴムシもいるしな」


「いや待ってください。それと休息と何の関係があるんですか?」


「食うんだよ」


 そう言って、勇者の剣でサクリと刺す。もう解体も慣れたものだ。


「生ごみのような臭いと味だが、保存食は貴重だからな。現地調達できる限りはそちらを使おう」


「それ、猛毒って知ってます……?」


 セポナはジト目で睨むようにこちらを見ている。

 しかし猛毒だって? いや結構食ったぞ俺。

 そう言えば2回目にスキルが発動した時に、一応可能性を考えた記憶があるな。

 だが竜の血肉も食っていたし、それ以前に飲んだ水、大気などの環境、気が付かないうちに毒虫に刺された。考えれば可能性はきりがなかったから、取り敢えず保留にしておいたんだ。

 でもそれ以降、何度も食べたが害は無かった。マズいけどな。


「俺は食えるぞ」


「わたしは食べません」


 意見が真っ二つだが、無理やり食わせても仕方が無い。

 それになんとなくだが、スキルの一端を見たような気がする。

 だけどどうだろう。まだ断定するには早いだろう。

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