第34話 こいつの話は何処まで信じて良いのだろう
「わたしと奴隷契約を? 冷静に見えましたが、意外とそっちの方も……」
今更になって、もじもじしながらパンツを隠す。
「御託はいいからさっさと話せ」
こちらがよっぽど怖いのだろう。心はしぶしぶ、体は跳ねるように木箱の一つへと行くと、ごちゃごちゃと抱えたまま戻って来た。
なんだか思ったより色々あるな。
しかし何かね、奴隷契約って。
まあ普通に考えれば単なる主従契約に過ぎないが、場所が場所だ。
ゲーム的な世界という言葉を思い出す。この世界で契約と言われても、素直に俺の世界と同じ契約とは思えない。
となればアレだ。主人には絶対服従にするアレ。俺の世界には無かったが、ある意味お約束の代物といっていい。主にエロ方面で。
やはり強制力なり制約なり、何かがあると考えても良いだろう。
まあ実際にどうなのかはこれから聞いていくとしよう。
「こちらが契約書。こちらが契約紋を押すハンコ」
「ハンコかよ」
「何か?」
「いや、何でもない」
ハンコと言っても直径は小型のフライパンくらいある。
そういやお腹って言っていたな。あれをポンとお腹に押せばいいわけか。
「それとこちらが淫紋用のハンコで」
「待て、それは待て。尋ねるが、それは何の為にある?」
「だって、ご主人が生理的に無理な人だったら嫌じゃないですか。そんな時は、これで自分を誤魔化すんです」
ああ、思ったよりもなんか凄まじく後ろ向きな理由だった。
「それで、奴隷契約を結んだ時の利点と制約は?」
大体察しがつくが、こういった内容は一応聞いておかないとな。
まあ、お約束を確かめるための儀式みたいなものだ。変な地雷でもあったら大変だしな。
「先ず、奴隷が死んだらご主人が死にます」
俺はいきなり吹き出しそうになった。何かを口に含んでいなくて良かった。
つかなんつー地雷だ。即死級じゃないか。というか、本当に死ぬじゃねーか。
「それはまた、随分と変わった制約だな。それで、一応見てはいるが、主人が死んだら奴隷はどうなる?」
「解放されます。だから主人を毒殺する奴隷って多いんですよ」
待てやおい。何の利点も無いじゃねえか。普通は絶対服従とかそういった類じゃないのか?
何だよ主人を毒殺って。物騒すぎるだろ。しかも奴隷が死んだら自分が死ぬけど逆は無し。完全に主従逆転して庇護対象じゃないか。主人とか言いながら、一生ご機嫌取りのガードマンだぞ。
いやまてよ――、
「お前、何処まで真実を言っている?」
「全部真実ですが何か?」
くそー。俺の予定では奴隷契約をして、多分それで嘘はつけなくなるから情報を聞き出した後、奴隷契約を解除。そのままさようならする予定だった。
しかし今の話だと――あ、待て待て。落ち着こう。
「今の話だと、主人には奴隷と契約する
「利点としては、やっぱり忠誠心の高い従者でしょうか。ご主人の命令には一部服従ですので、便利に使われます。夜のお相手もちゃんとやりますよ。わたしはまだですが」
絶対服従じゃなくて一部服従ってところが怖えぇ。
つか毒殺を狙っていて忠誠心もクソもないわ。
「拒否できる命令の有無は?」
「自害しろとかの命令は聞きません」
「そりゃ自殺と同義じゃねーか。しねーよ」
「そうでもないのですよ。今の形になる前には、確実で安らかな死が欲しくて奴隷を買う人もいたそうです」
レアケース過ぎてまずお目に掛かれないだろうな。
だがまあ、命に関わらない事なんかはちゃんと仕事をこなすし、命令も聞くって事か。
それにそうか……今の形になる前の、絶対服従を強要する手段もあると言う事だ。
「ご質問はそれだけですか? これで命ばかりは……」
「いや、聞きたい事はまだ山ほどある。もう少し付き合え」
命が賭かっているのに、心底嫌な顔をしやがった。
見かけや態度と違って、結構胆は座っているらしい。
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