第11話 名残惜しいが帰る以外の選択肢はなかった
この後、数人のスキルチェックが終わり、これで全員のスキルが確定した。
そして当然の様に、俺達の前には外周にいたフードを纏った連中がやってきていた。
「先ずは皆様、あちらでご休憩を。そこで今後の事などを話し合われると良いでしょう。個人で行くも良し、チームを組むも良し、全員で行くのも、もちろん構いません。ただ迷宮の事やスキルの使い方は知っておいた方が良いでしょう。そういった説明をするために、10名の方が控えております。
そして皆にはそう告げた。
だけど、俺は違う。まあ分かっているんだがね。
「大変申し訳ないのですが、貴方は帰還となります」
そりゃそうだろう。最初に言っていたしな。
それを聞いて
「いや、俺は帰るよ」
「なんだ、一緒に冒険が出来るって思ってたのによ」
「私も、
「何とかならないのかしら?」
「皆の気持ちは嬉しいけど、俺はただの足手まといだよ。それにスキルも無いんじゃ、持ち帰るものも無い。それに、もうこれ以上ここにいたくないんだ」
それはまあ、9割は言い訳だ。
多くの者はフードの連中に付いて行ったが、またハズレの俺を笑っている者も少なくない。
仮に俺が特例で残れたとしても、そんなチームに素直に入りたいってやつはそんなにいないだろう。
しかも俺は無力どころか、今の皆にとっては完全な
未練がましく残るより、素直にこうするのが一番さ。
「ただ呼び出したのは我々です。あまり嫌な想いで帰って頂くのも心苦しく思います。3日間の滞在は許可出来ますので、その間に町の見物などして行ってはいかがでしょうか?」
「あ、なら3日間は一緒にいられるね」
「いや、その3日間もこれからを決める大事な期間だ。一緒に遊んでも仕方ないよ」
そうだ……チーム編成は最初に大体決まって、以後は固定になるだろう。3日も出遅れさせてどうする。
「それにどうせ、戻ったら全部忘れるんだ。だけどきっと俺は驚くぞ。何せ次の日になったら、お前たちが今までとは全然違う凄い人間になっているんだからな。むしろその時に、俺を捨てないでくれよ」
「当たり前だよ!
「私たちはこれからもずっと一緒よ」
「まあ俺は分からんがな……って冗談だよ。俺たちの友情は、立場がどうなったってかわりゃしないさ」
「ああ、そうだな」
実際、捨てないでくれよなんてのは完全に冗談だ。
何があったって、今更俺たちの友情は変わらない。そう信じられるだけの時を過ごしてきたんだ。
「じゃあ、先に帰るわ。頑張れよ」
「うん。また向こうで会おうね」
「きっとすごい力を手に入れて、敬一君を助けてあげるね」
「お前が自慢できる人間になって戻るよ。じゃあな」
「それでは帰還ゲートへのご案内をいたします」
どんなふうに召喚されたかは分からなかったが、多分帰還も同じことをするのだろう。
そんな風に考えていたが、どうやら帰り道はちゃんとあるらしい。
まあ呼ぶときはランダムでも、その時に元位置を記録しておけばそんな事も可能だろう……なんて、そんなシステム的な事を考えても仕方がない。こんな非常識な状態でな。
考えてみれば、異世界召喚だのスキルだの凄い力だの迷宮だの宝探しだの……挙げればきりがないが、理解の
もうここらで全て忘れるとしよう。
というか、さっさと忘れたい。さっきの恥ずかしさも、この悔しさも。
もしも一欠片でも残っていたら……それはきっと悪夢だろうな。
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