第3話 この二人がいるだけで俺は生きていける

「よう、西山。こういう時って、何て言えば良いんだろうな」


 ひんやりした大理石の様な床を這いずりながら、俺は皆と合流した。


「分からね。だけどまあ、なるようになんだろ」


「そうね、危害を加える気はないみたい」


 西山に続いてそう言ったのは、水城瑞樹みなしろみづき先輩だった。

 黒いロングの姫カット。身長は160センチと、俺より10数センチちょっと低い。

 1つ上の先輩で、品行方正成績優秀、それにスポーツもそれなりだ。

 そしてなにより、制服の上からでも分かる巨大な膨らみ。スカートから覗く艶めかしい生足。

 それに何より、いやがおうにも人目を引く美人。

 女子弓道部の主将でもある。


 何でそんなに詳しいかって?

 それは俺の憧れの先輩だからだ。


 いや、すまない。少し省略した。

 実はそれよりも大きな理由があって――、


「敬一君もいるなんてびっくりだね。世の中何が起こるか分からないねー」


 と、暢気のんきな声が続く。

 もし知らない人間が見たら、きっと水城先輩と二度見するだろう。

 黒いロングの姫カット。身長は160センチと、俺より10数センチほど低い。

 そして巨大な膨らみから太腿、更に美人な所までそっくりだ。

 ただ違いは表情……と言うか顔立ちと言うべきか。先輩程の高貴さは感じない。


 まるで双子のように見えるが、俺と同級生。つまりは先輩の一個下だ。

 姉妹とはいえ、ここまで似ているのは凄いと思う。

 そして俺が先輩の事に詳しいのは、こいつの存在があったからだ。

 名前は水城奈々みなしろなな。そもそもの出会いは中学に――、


「皆さま、静粛にお願いします。これより、今の状況に関してご説明させていただきます」


「そ、そうだ! これはいったいどうなっているんだ! ちゃんと説明しろ!」


 凛とした女性の声にかぶさるように、野太い男の声が響く。

 ここは本当に声が響く。反響しているといった方が良いだろう。

 男の見た感じは30代後半くらいか? いや40代かもしれないし案外20代かもしれない。まあ普通の人だ。


 だけどその勇気は凄いと思う。

 言うまでもなくここは見知らぬ地。完全なアウェー。しかも周囲はローブ姿の得体の知れない連中に囲まれている。

 今の所は穏便な態度をとっているが、生殺与奪は完全に握られていると言って良い。

 この状況であの態度。相当な勇者か、ただの馬鹿だ。


「はい、これから全てを説明させて頂きます。少々長くなりますが――」


「かいつまんで説明してくれ!」


 ああ、ただの馬鹿だな。

 情報は多いに越した事は無い。わざわざ省略させてどうするんだ。


「はい、ではまずは簡単に説明させて頂きます。その後、質問に関してはそれぞれ周囲の者に詳細を説明させます」


 今更だけど、やっぱりあの女性が最高位か。まさか上司に対して説明させるとは言わないだろう。

 いや、少し訂正しておこう。奈々ななならやりかねない、うん。


「ねえ、今失礼な事を考えなかった?」


 ジト目で水城奈々が睨んでくる。いやまて、こいつそんなに勘が鋭い方じゃなかっただろう。むしろド天然……。

 いや、目つきが更にきつくなった。ここらで考えを切り替えよう。

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