【 召喚された日 】

第2話 そこは見た事もない場所だった

 そこはただただ白く、眩しいばかりの場所だった。


 目の前に立つのは美しい女性。

 20代前半くらいだろうか。金色の長い髪。白い肌に、少し彫りの深い顔立ち。

 青を基調とし、金の刺繍が至る所に施された豪華な衣装。

 胸元は大きく空いて豊満なバストが強調され、開いたウエスト、そして左右のスリットからは艶めかしい肌が見える。

 露出はあれだが、どことなく神官と言えなくもないような服装だ。


 手に持っているのは大きな杖。彼女の身長――推定だが160センチよりも少し長く、先端には不思議な輝きを放つ太陽の様な飾りが付いていた。

 なんだかゲームに出てくる痴女風の神官といった出で立ちに見える。


「今回も14人ですか」

「ならば、地下へ向かった26人はまだ無事だという事」

「これは重畳ちょうじょう。この世界に平穏がもたらされる事も、そう遠くは無いでしょう」

「しかしそれはそれで……〇□□。失礼しました」

「ここは何だ? どこだ?」

「夢……?」


 次第に状況に慣れてくると、周りの声も聞こえてくる。

 どうやら2種類か?

 状況を分かっている連中と、分かっていない連中だ。もちろん、俺は後者。状況なんて何も分からない。


「どうか静粛せいしゅくにお願いします。これから全てをお話します」


 凛とした女性の声が響く。

 最初から数えて、時間的にはまだ数十秒くらいだろう。だけど今の声で、半分寝ていたような意識が覚醒してきた。


 よく見れば、ここは白い石壁に囲まれた円形の部屋。

 外周には白いローブを纏った連中。そして中央には声を発した神官風の彼女。

 そこに挟まれる形で、俺達はバラバラにしゃがみ込んでいた。


 知り合いも居れば、知らない人間もいる。

 服装も制服だったり私服だったりスーツだったりとバラバラだ。

 かくいう俺は制服姿。いつも通っている杉駒東高校のものだ。

 ほぼ毎日着ている服だけあって、さすがに体に良く馴染む。


 いや待てよ? 俺の記憶だと、確か寝る前に軽く本を読んで寝たはずだ。

 当然、制服で寝るほど馬鹿じゃない。

 周囲の人たちもそうだ。下着姿とか、そういった姿の人間はいない。全員が普通に服を着ている。


「おい、敬一けいいち。こっちだ」


 小声だがはっきりと通る声。これは――西山か!?

 西山龍平にしやまりゅうへい。俺の同級生にして親友――いや、腐れ縁か。こんな状況でもいるのか?

 なんだか突然現実味がなくなってきたぞ。


 だけど逆に、意識が覚醒するごとに体から感じる現実感は増してくる。

 間違いない――とは断定したくない気はあるけど、もう分かっている。ここは現実だ。


 というか……俺を呼んだ西山の周囲には、俺と同じ杉駒東高校のメンバーが集まっていた。

 まだ何も分かっていない状況で知り合いに会えるのは心強い。

 と言うかよく見ると、その一角には俺と同じ学校の面々が揃っている。


 そちらへ向かうが、また立とうとしても力が入らない。まるで生まれたての小鹿のようだ。

 他にも立っている人間は一人もいない。

 そう考えると、あれは集まったんじゃなくて最初からそうだったのか。まあ俺も近いしなと、ずりずり這うように合流する。


 俺と同じ学校の人間は全部で11人。

 なんかさっき全部で14人とか聞こえたが、そう考えると他は3人か。随分と偏ったものだ。





 こんなふうに落ち着いて考えていられたのも、今考えてみれば知り合いがいたからだろう。

 そしてその中には彼女たちもいた。だから無意識のうちに、俺は襟を正していたのだと思う。

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