第4話 命を懸けたゲームなんて御免だが

「ここはラーセットの首都ロンダピアザ。そしてここは召喚の間です」


「召喚の間?」


「そうです。ここは皆様方をこの世界に召喚するために儀式を行う場所。そして、皆様方はそれに応えてくださいました」


「勝手に召喚しておいて、応えたも無いだろう!」


「そうだそうだ!」


 俺と同じ制服の連中も騒ぎ出した。

 だけど俺としては、そんな雑音は後にして欲しい。

 ずっと感じている違和感。その正体を――、


「どうぞお静かに。皆様方にとって、これは決して悪い話ではありません。ここは私たちの世界で、確かな現実です。ですが、貴方がたにとっては一時のゲーム。それも、一切損をすることの無い安全なゲームなのです」


 ゲーム。その言葉ではっきりとする。彼らは俺と同じ言葉を話している。

 それどころか、あまりにも状況慣れしている。周りが騒いでも、まるでいつもの出来事のように流しているじゃないか。

 そういえば最初に何か言っていたな。今回は14人。他が無事とかなんとか……。

 今更考える必要は無い。これは初めての事じゃない。何度も行われている事だ。


「ゲームって言われても意味が分からねぇよ。もっとちゃんと説明してくれ」


「そうだ、そもそも参加する理由ってのは何なんだ」


「ゲームって言うからには、当然勝者と敗者がいるんだろう? 敗者はどうなるんだ!」


「説明しろ!」


 最初の内は大人しかった周囲も、場に慣れて来たのか、それとも相手が大人しいからか、だんだんと声のトーンが上がってくる。

 俺としても確認したい事があったが、まあ周りの質問の答えを知りたいのも事実だ。ここは大人しく聞いておこう。


「ゲームというのは、いわば宝探しです。この都市は巨大な迷宮の上に作られています。そうですね、あなた方の感覚で言えば太古の鉱山都市と言うべきでしょう」


 やっぱり。日本語だけじゃない。彼女は俺達の世界を知っている。


「地下迷宮には、貴重な鉱石や太古に作られた魔法の道具。中には神の世界からもたらされた秘宝さえも存在します。貴方がたには、是非それの回収をお願いしたいのです」


「無茶を言うなよ。俺達はただの学生だぞ」


「大体、何で自分たちでやらないんだ。おかしいじゃないか!」


「危険はないの? それに何日も帰れないなら家に連絡しないと……」


 こいつら言葉にも世界にもツッコミを入れないのな。

 それにもうちょっと冷静に考えて欲しいものだ。こっちはいつ周りの連中が実力で黙らせようとするか気が気じゃないぞ。


「一つずつお答えします」


 少し声のトーンが上がった凛とした声が響く。

 響くのは部屋の構造のせいだろうが、それ以上に何か気圧される感じがして一斉に静かになった。

 今までのざわめきが嘘の様に静まり返った中、神官風の女性は話を続けた。


「先ず宝探しですが、私共の世界の人間も、もちろんやっております。ですがかんばしくないのが現状です。その理由は2つ。1つは異世界から召喚された貴方がたは、わたくし達には無い力が必ず備わっています。我々は、これをスキルと呼んでいます。命名は、以前に召喚された貴方がたの世界の方が行いました」


 ……そんな事を言われても、何の実感もないぞ。

 だけどそんな心のツッコミなど無視して話は続く。


「第2に、わたくし達は常に命の危険にさらされています。特に迷宮の奥深くは危険も多く、多くの猛者たちが命を落としています」


「いやちょっと待てよ! 俺達の命はどうなってもいいのか!」


「いきなり呼び出して命の危険なんて冗談にもほどがある! 俺は帰らせてもらうぞ」


「俺もだ!」


「そうだ!」


 再び騒然となる室内。まあ気持ちは分かる。ゲームとか言われても、死ぬとか……いや待てよ? なら何で先に行った連中がいるんだ?

 彼らは――、

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