2.迷子っ!!【第二巻発売記念SS】


 前鬼の里……いや広すぎませんかねぇえええええ!!?

 ここ何処!

 何処!?

 テンダー!! ウチカゲー!! 姫様ーー!!

 たーーすけてくれーーーー!!


 いや本当にここ何処よ!

 ちょっと外出たら道分かんなくなって、帰ろうとしたけど帰り道も分かんない!

 視線が低いんだよ視線が!!

 地面すれすれだからね!!

 見えるもんも見えませんってこれじゃあ!!


 何度か鬼たちとはすれ違ったけどさ、まぁ言葉が通じるわけもないし結局帰り道とか分からないわけでして。

 もうそのままぶらぶらと歩いているんですけど……これ夜までに帰れるかしら。


 いや、解決方法はあるんだ。

 無限水操の中に入って空を飛べば一発で帰り道は分かりますよ?

 でもね?


 なんか悔しいじゃん??


 迷子になって結局裏技使って帰り道を把握するのはなんか違うじゃん?

 いや正攻法ではあるんだろうけど、もうちょっと粘ってみたいよねっていうね。


 操り霞もあるんだけどさ、これもいざって時じゃないとすぐにMP無くなっちゃうからな。

 迷子でMP切れとか本当に洒落にならん。

 ていうかそれで帰ったとしても、俺だけで外出したら即迷子決定だからね。

 少しくらいはこの辺の地形を覚えておかないと!


 んで、ここ何処よ。


 周囲を見ていると、漆喰が塗られた白い壁がずっと続いている。

 弓狭間が設けられており、それ以外には近くに雁木があるくらいだ。

 登ればこの辺が何処か分かるだろうか?


 そう思って登ってみる。

 段差が一々高いからちょっと苦労したけど、比較的速やかに登ることができた。

 ここからは何が見えるだろうかと思った顔を上に向けると、漆喰の壁が目の前にある。


 塀がないところを探さないとな。

 ていうかこの辺上ったり下りたしするところが多すぎて、上に行く方法が分からないんだよね。

 蛇目線では大変です。


 ぴょいと兵の上に登り、近くにあった蔵らしき建物の上にも上ってみる。

 そこから周囲の状況を何とか把握することができた。

 どうやらここは……大手門がある場所らしい。


 俺どんだけ下に降りてきてんねん!!

 迷子じゃなくて方向音痴だったか!!


 んー……これ上に戻るの大変だなぁ……。

 どうやって上ればいいんだろう。

 塀を辿っていけば上に行けるかなぁ。

 いやそう簡単な話でもなさそうな気がする……。

 まぁとりあえずここから降りよう。


 とりあえず今いる場所は分かった。

 蔵の屋根からどこかに行けたらよかったけど、他に連なっている建物がなかったので地面を歩きます。

 とりあえず階段を探しまして……んー、なかなか見つからないなぁ。

 多分ここ一の丸だよね。

 あ、でも雁木があったから二の丸……いやあれは弓狭間がある場所に上る為の階段か。

 んじゃやっぱり一の丸だね。


 てか、本当にここ広いな……。

 形式的には平城かな。

 天守閣も立派だし、よくまぁこんなのここに作れたね。

 鬼たちは力が強いから、石垣とかも積み木みたいに作っていったんだろうなぁ。


 お、階段めっけた。

 んじゃこれを上りまして~っと。

 あっ、ここ虎口門か。

 すげ~、こういうのしっかり作ってあるんだなぁ。

 門の上には石落としもあるけど、名称こんなんだっけ?

 なんかあやふやだ。


 ていうかこんな太い柱どこから持ってきたんだろう。

 整形されてるから、元はもっと太い木だったんだろうなぁ。


 俺はそんな感じで城の見学をしつつ、とにかく上へ上へと上っていく。

 木の太さや石垣の作り方、建物の作り方に感心していると、道中で一人の鬼と出会った。


「おわっ! 白蛇様!」


 兵士のようだ。

 若気な鬼だなぁ。

 まぁ話を聞いても意味ないから……んーどうしようかな。


「散歩ですか?」


 あ、迷子です。

 首を横に振ると、おやと言った様子で若い鬼が首を傾げた。


「そうでしたか。ではお帰りになられるのですかね」


 そうです!!

 帰り道教えて頂戴!!


 大きく首を縦に振ると、若い鬼はすぐに帰り道を教えてくれた。


「本丸御殿はここをまっすぐ行って右手にある虎口門を通りまして、その右の雁木を上ります。そしたら下に降りる坂道がありますのでそれをまっすぐ歩いていくと本通りに出ますので、そこから大きな階段を上っていけば二の丸に到着します」


 え、まだ二の丸……?


「次に門が三つ並んでいる場所がありますので、それを目印にしながら鼓楼を目指します。そこに階段がありますので、登った後に先ほどの三つ並んでいる門の場所へと向かいまして……って白蛇様?」


 いや、もう聞くより連れて行ってもらう方が良いかなって思ったんで……。

 乗りますね。

 連れて行ってください。


 尻尾の先でちょいちょいと指示を出す。


「これ……姫様に怒られませんかね」


 ……ごめん、そこまでは考えてなかった。

 でもまぁ本丸御殿の近くで下りれば問題ないと思うから!

 ね!


 不安はあったが、若い鬼はとりあえず俺を運んでくれることになった。

 いやー、結局こうなっちゃうんですね~~。

 迷子ってこんな気持ちなのかしら……。

 今度はもう少し周囲の地形を見ながら降りてみることにしよう。


 それから何度か一匹で散策をしたが、すべて迷子になってしまったので前鬼城を把握するのは早々に諦めた俺なのでした。

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転生したら小魚だったけど龍になれるらしいので頑張りますショートストーリー 真打 @Shinuchi

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