プロローグ 決意


 「いくらでも使ってください!」


 メッセージを送ってから1分もしないうちに返信が返ってきて驚いた。

 内容にも驚いた。


「ちゃんと読んだのかな」


 私が今までかかわってきたイラストレーターは良くも悪くも自我の強い人ばかりだった。

 使用料を高く吹っ掛けてくる人、私の書いた台本に文句をつける人、たちの悪いのはセクハラをする人だ。

 そんな人たちと関わるのが嫌でこの「葵」と言う無名のイラストレーターに声をかけた訳だけれど、どうやら当りらしい。


「念のためにもう一回送っとこ」

「葵さんありがとうございます。あの確認なのですが、イラストの使用料とか私に注意してほしい事はありますか?」


 寝よう。

 安心してどっと疲れが襲ってきた。

 仕事部屋を出て暗い居間のベットに倒れこんだ。


「いい人だといいなぁ」


 今日の寝起きは最悪だ。

 休日なのに携帯のタイマーで目を覚ましたからだ。

 けれど一件のメッセージに気づくことができた。

 昨日の人だろうか。


「趣味で描いているだけなのでどう使ってもらっても大丈夫ですよ。もしこんな絵が欲しいとかご要望があればどんどん言ってください。学生なので描くのに時間がかかると思いますが、自分の書いたイラストに声をあてて頂くなんて嬉しいことありませんから。」


 「嬉しいことありませんから。」この道そんな言葉を言われたのは初めてだった。

 多分この葵さんは男の人だ。

 自分のことを「自分」と呼んでいるからそう思った。

 後、趣味にしては上手すぎる。

 本業の人に引けず劣らない魅力がイラストにあった。

 しかも学生、大学生だろうか。

 気づけばこの葵と言う人のことをずっと考えてしまっていた。


「よし!」


 頬を両の手のひらで叩いて決心を決め、携帯のキーボードを叩いた。


「葵さん、私のイラストレーターになってくれませんか。」




 

 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ASMRな彼女は肯定し続ける うるさい!ミント @urusaiminto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ