電車に乗って

雨世界

1 君と出会い、君と別れる。

 電車に乗って


 プロローグ


 君と出会い、君と別れる。


 本編


 君のことが好き。


「ねえ、くるみって今好きな人いるの?」

「え?」

 そんなことを突然、友達の大川あずきから聞かれて、堀越くるみはとても驚いた顔をした。

「どうしたの急に。いないよ、そんな人」くるみは言う。

「本当かな?」にっこりと笑ってあずきは言う。

「どうして?」

「だってくるみ。最近変わったもん。絶対好きな人ができたせいだと思ったんだけどな」あずきは言う。

 ……変わった? 私が?

 あずきにそう指摘されてくるみはとても驚いた。(だって、親友のあずきが言うのだから、私はいつの間にか、以前の私とは本当にどこかが変わってしまったのだ、とくるみは思った)


 好きな人。

 私が少しだけ変わった理由。

 思い当たる人がいる。

 ……それってたぶん、あの人のことなのかな?


「あ、くるみ。今、誰かのこと考えてたでしょ!? それって誰!? 教えてよ! 私たち親友でしょ!?」となぜかとても嬉しそうな顔をしてあずきは言う。

「だめ。教えない」とそんなあずきを見て、にっこりと笑ってくるみはいった。

 ……だってそれは、私とあの人だけの、本当にとても大切な思い出だから。(だから、ごめんね。あずき)

 するとあずきは(まるで子供みたいに)頬を膨らませてひどく不満そうな顔をした。

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