第13話 入団!!!!


 「お嬢さん、本当に入られたのですね。お家は反対なさらなかったのですか?」


 試験を受けた時に声をかけてくれた青年がいる。丁寧な物言いだが私を知らないことから下級貴族かなと見当をつける。


 「ええ、父はとても寛大な人だったようです。」


 「そうですか…自己紹介をしてもよろしいですか?僕はティアニー子爵家の三男でグレン・ホレス・ティアニーと言います。よろしくお願いします。」


 「こちらこそお願いします。わたくしは、アーリア・イヴ・オルコットと申します。」


 私の自己紹介に周りもざわめく。公爵家は何を血迷っているのか、と。しかし、私の方だと分かると冷たい視線も注がれる。社交界のことが分からない平民の人たちは何が起こったのか分からずそわそわしている。

 しかし、間の前の彼は少し驚くと、また微笑んだ。


 「そうでいらっしゃいましたか、公女様数々のご無礼申し訳ございません。」


 「いえ、構いません。それより、これからは共に戦うのです。あまり畏まらないでください。」


 「はい、お言葉に甘えて。」


 彼は、とても優しそうな人だった。試験会場でも、セレーネに稽古をつけたままの明らかに泥だらけの平民のような格好をしていたのに構わず声をかけてくれた。私は彼に微笑みかけ、配属された隊を見に行く。


 私は安堵した。セレーネと共に第2隊配属だった。要望が通って安心した私は、横にいるセレーネの手を取った…ハズだった。


 「セレーネ!やった!おんなじ…」


 「僕は、グレンです。」


 「っわぁぁっ?!ごめんなさい!!」


 「お嬢様、私はこっちです。」


 セレーネはいつも私の左につくのでついやってしまった。当のセレーネは私の真後ろからひょこりと顔を出した。


 「ですが、僕もおんなじです。よろしくお願いします。」


 「はい!」


 私たちは、支給された制服をもらうべく第2隊のテントへ行く。第2隊は魔物討伐への参加と、皇都警備が仕事になる。これは第1隊もほぼ同じだが第1隊は名誉のある強者に授けられる勇者の称号を持つ人が大多数の隊であり、国章入りのマントが支給される。そんな雑学を聞きながら、そんな隊に新人が入れるのかと第1隊のテントを除くとたった一人、見慣れた人の姿があった。


 「ク…クレト…?!?!?!!」


 深紅の短髪にセレーネより少し深いオレンジ色の瞳、そして褐色の肌はクレトのそれだった。見知った顔が、この国一のエリート軍団のテントにいた。


 「ぐあっ!?お嬢?!セレーネ!!なんでお前らそっちいんだよ?!は???俺、てっきり第1隊希望すると思って…」


 「何それ…どういうこと???なんであんたってそんなにアホなの??黙って領地帰ったら???」


 セレーネが一歩前に出て怖い顔をする。クレトの奇行に完全に怒っている彼女をなだめてクレトにここにいる理由を問う。


 「ク、クレト…??何でここにいるの?」


 「何でってお嬢が入るっていうから…」


 「じゃあ何で第1隊にいるの?入るなら普通第2隊じゃない??」


 「だって!!!お嬢たちいっつも事後報告じゃないっすか!!!急に騎士団の試験受けてきたーーーって言われても!!!俺だって慌てて受けたんすよ?!二次公募で激戦を乗り越えてさぁ!!!お嬢なら1っぽいから第1隊志望にしたんすよ?!もうっ、何なんすかぁ~元はと言えばお嬢たちが仲間はずれにするからぁーーー」


 急にぐずりだす彼を見て、グレンが動揺する。それはそうだ。選ばれた者の第1隊の新人があんなにメソメソそしている様は確かに気色が悪いだろう。私は彼にごめんね、と謝りながらクレトを引っ張って立たせた。




 私たち3人はグレンと別れた後、屋敷までの道を大きな声で争いながら歩いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る