第12話  入団試験と仮面④


 「どうでしたか?」



 二次試験が終わり、帰路に就く私にセレーネは訪ねた。けれど主人からの返事はなく、ただトボトボと馬車との待ち合わせに向かっていた。


 「あの…?」


 馬車に乗り込み、ドアが閉まったところでも一度声をかける。顔を覗き込むと主人は呆然とした顔をしていた。



 「セレーネ…あなたはどうだったの?」



 やっと返事が返ってくる。



 「えっと…私は最後の方に分からないのが二つほど…」


 「おかしい。」


 セレーネはギョッと目を見開いた。アーリアの顔は犯罪者のように凶悪な顔になっていた。同行は完全に開き切り、歯をとてつもない力で食いしばっている。いつもは血色の良い頬には物騒に青筋が立っている。


 「どうしたのですか?!」


 「騎士団だよね?騎士団の試験なのに??あんな簡単で良いの?!」



 主人は馬車の中でバタバタと頭を抱ええて暴れだした。




【ナタリタ帝国 騎士団 採用試験 筆記】



問一)この図の様子を分かりやすく報告しなさい。


   ○○○○○●●●


   答え、白い丸が五個、黒い丸が三個です。



問八)自分の家族について説明しなさい。


   答え、父も母も、良い人です。

      厳格でありながらも優しさを持ち合わせている方々です。




 …えっ?!?これだけ???んんんんんんんんん?!?!?

もうちょっと難しくてもいいよね???騎士ってアホなの???



 「お嬢様、仕方のないことです。一般教養ならこれ位でしょう。合格が確定したんですから暴れないでください。」


 セレーネの冷静ないつのも返しで落ち着いた私は咳払いをして窓の外に視線を移した。


**********



 「セレーネ?向こうの屋敷の方はどうなってる?」


 「大丈夫です。滞りありませんよ。」


 私たちは入団に際して本格的に皇都に拠点を置くことにした。今までは公爵家の領地で過ごす季節の方が多かったのだがこれを機に領地を離れた。皇都にある公爵家の屋敷は社交シーズンに滞在していたため馴染みがある。けれど、皇都の屋敷には何の仕掛けもないためいざという時に出られない。だからセレーネに頼んで手配してもらった。私が月夜に被る仮面の隠し場所を。


 馬車は皇都への道を走る。騎士団に入って私たちが何をするのか。目的を再度確認したアーリアは緊張しているのか拳が固く握られていた。

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