第11話  入団試験と仮面③


 「お、おおおお…??」


 「なんだあれ…すっげえ強いじゃねえか…。」


 スタンドで観戦をしていた騎士たちはどよめいていた。下にいる祭典係も唖然としている。その視線の先には、薄い茶髪の少女…セレーネがいた。オレンジ色の瞳が燃え盛る炎のようで威嚇されているように関係ない騎士たちも気圧される。


 「セレーネ、あんまり目立たないでって言ったじゃない?!」


 私はセレーネの所へ駆け寄った…瞬間


 「うわっ!」


 セレーネの剣先が私の喉元へ向いた。私はとっさによけてセレーネにげんこつを落とした。


 「イッタ!!なに…」


 「何じゃない。何主人に剣向けてんの。…もうこの試験終わるから程々にしときな。」


 私はセレーネを撫でながら落ち着かせる。セレーネは元々外国の貴族の落胤らしい不思議な力を持つ一族の育ちだったらしいがセレーネはその力を持っていなかったので捨てられてらしい。捨てられてから奴隷商人に捕まり、逃げだしたときにはこの国の浮浪地帯いたそうだ。そこで一度拾われ、その時戦闘技術せんとうぎじゅつを身に着けたそうだ。その後私と出会い、共にいる。


 私には理解しえないような壮絶な過去を持つ彼女はなぜ私の傍にいてくれるのかいまいち分からない。私も彼女のすべてを知っているわけでは無いのでいつか聞けたらいいと思う。それはクレトもそうだ。実はクレトが一番不思議なのだ。彼は、セレーネ同様で素はとても粗野だが礼儀作法は一応できているし明らかにこの国の人間ではないのにこの国の言葉が堪能だ。


 未だに謎の残る仲間たちのことを頭に巡らせながら私たちは第二次の会場へ入った。


 「お嬢様、二次試験は筆記ですが勉強はしてきましたか?」


 「何言ってんの。この国の公女が今更、何を学ぶっていうの。」


 私はさっきの乱闘で乱れた髪を払いながらセレーネに持たせていたカバンの中を探る。


 「何をお探しですか?」


 「ん…、あった。ほら、二人分の羽ペン…必要でしょう?」


 「…どうも。」


 「何?不安??」


 この試験は平民でも貴族でも一緒に受けるものだ。この試験では一般教養を問うもので、素質と本人のやる気があるのならどんな身分でも通過できる。セレーネは似合わず不安なようで周りをきょろきょろしている。


 「そんなんじゃありません…。」


 「ならいいけど、試験中にきょろきょろするとカンニングと間違われるかもしれないから気を付けなよ?」


 セレーネに釘を刺しながら私も辺りに目を配った。すると私たちが見られていることに気づく。


 …視線には慣れてるけど、やっぱり女が騎士は目立つか。今、騎士団に在籍している人の中に女性はいない。救護支援には女性もいるが、それは騎士ではないため関係ない。


 私たちは浮いたまま適当な席に座り、筆記試験が始まった。

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