第10話  入団試験と仮面②


 「お嬢さま、来ちゃいましたね…来ちゃいましたよ…」


 「何でちょっと興奮してんの?」


 初めは断固反対していたセレーネは自分も入ると聞いた時からなぜか少し乗り気になっていた。良く分からないが自分に都合のいいことだったので、深く詮索して気を曲げられないよう気にしないことにした。


 「一次試験は…乱闘?すごいなぁ…。」


 「なんだかむさ苦しいですね…。」



 「お嬢さん方、ここは騎士団の入団試験会場ですよ。」


 一人の男性が声をかけてきた。周りも「間違ってるよ…」みたいな生易しい目線が注がれる。私はどうしたものかと笑顔をつくった。


 「知ってますが。わたくしとお嬢様はこちらの入団試験に来たのです。」


 さっすが!私のセレーネ!歯に衣着せぬ物言い…!!

ノンデリカシー界の女王様!←?


 「…お嬢様方が…?騎士に…??」


 「えぇ、御親切に有り難うございますわ。入団できたと時はよろしくお願いしますわね。」


 私はそれだけ言うとセレーネと一緒に会場へ向かった。入り口で木刀を渡され、闘技場のようなところへ入る。スタンドにはちらほら騎士たちがいる。


 「セレーネ?これ当たったら痛いよね…。」


 「しょうがないでしょう。死にはしませんよ。」


 「本当?死なない??」


 「…多分。」


 「多分?!」


 私たちが騒いでいるうちに闘技場の門が閉じた。


 「この度、一次試験総試験監督をさせて頂くラウロ・ワトキンソンだ。この試験はこのフィールド内で行われ、ここに置かれている胴の部分の鎧をつけて戦ってもらう。この鎧についているガラスの装飾が二つある。これら二つを割られた者から退場だ。制限時間は20分。騎士道も問うため動き方はよく考えるように。」


 水色の髪がふわふわとしていて優しそうに見えるが声がとてもよく通り、皆も引き締まっている。一次試験は少し野蛮だがしょうがない。ふるいにかけたいのだろう。毎回倍率は30倍にもなるこの試験は騎士団創立からの伝統で方式は一切変わっていないという。


 大きな鐘の音と同時に乱闘が始まった。


 …あれ???んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん?????


 「おらあああああっ!」


 飛び掛かってくる少年をひょいとよけ、いっぺんにガラスの装飾を割る。


 「あうんっ…」


 弱…い??んんんんんんんん??え、よっわ!めっちゃっ弱い!!!え???


 私はセレーネの方を確認しようと彼女の方を見た。そして唖然とした。

彼女の周りには夢半ばでやられた少年たちが倒れていた。飛び掛かってくる少年たちを容赦なく脳天一撃で殴り飛ばし、気絶したところで装飾を割る。


 えげつなっ!!血も涙もない…。


 気が付くと20分が経過していて、残った人たちは私達から一定距離離れていた。

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