第5話  討伐令②


 「お嬢様ッ!起きてください!」


 真夜中、目を覚ますとセレーネが私のベットのわきに立っている。私は眠かった。


 「んン~?んーーー。」


 「起きろッ!このアホお嬢!」


 「ンむぅ…」


 「魔物がッ!魔物が出たッ!東にあるアルバーンの森!!起きろッ!!」


 魔物という言葉で覚醒した私はガバッと起き上がる。ベットから飛び降り部屋の隅に置いてあるミラーをどかし、そこの床下に入っている鎧とローブを取り出す。セレーネはドレッサーの奥に入っている私の運動用のズボンとシャツの一式を取り出し投げつける。


 「私は着替えてくるからそれまでにそれを着ててください!馬とその他の武器はクレトが手配しますから頼みますよ!」


 セレーネはそれだけ言うと私の部屋から出る隠し通路の中に消えていく、屋敷の中でも私がしていることは秘密なため騒ぎにならないように人に合わない場所を使わなければならないのだ。この通路はおばあさまから聞いたもので、お姉さまではなく私に教えてくださった。次期公爵家の権力は私に握られると何度も言われた。プレッシャーだが今、それは関係ない。


 私は余計な考えを頭から追い出し、服を着替える。自分一人でもだいぶ切れるようになったが鎧はまだ手間取ってしまう。


 「お嬢!着た?!ってまだじゃん!!」


 セレーネが戻ってくる。私の後ろに回り手慣れた様子で鎧を着せてくれる。


 「セレーネ、通信用の指輪は?」


 「首から下げています。」


 セレーネは首から下げているチェーンの先についた指輪に一瞬目をやり、私の手を引いた。さっき現れた隠し扉の先に飛び入り出た先は邸宅街の枯れ井戸だ。私が先に飛び上がり出た。セレーネは綱を上ってくる。彼女もある程度の戦闘が出来る。それが原因で私に協力させられているのだ。

 井戸から出るとその先にクレトが立っている。深紅の短髪がさっぱりと似合う彼は普段は公爵家の侍従見習いだ。浅黒い肌はこの辺では見ないが彼はそこすらも魅力に見える。楽な作業着の彼も左の人差し指にグリーンの魔石が埋め込まれた通信用の指輪をつけている。


 私は馬にまたがると、フードを深くかぶった。


 静かな森一帯に馬の駆ける音だけが木霊する。どこからかたくましい男の人たちの雄たけびが聞こえる。今まさに戦っている最中らしい。


 ―うぉぉぉぉおっ!!!!!


 南西に200人…Aランク位?雄叫びの量で派遣人数と魔物のランク、いる方角まで分かる。とっても便利!


 「おうおう、むさっ苦しいっスねー。お嬢、そろそろ俺たちは離脱します。」


 「馬は任せた!じゃっ…」


 「気を付けてっス!」「お気をつけて!」


 二人が後ろで声をかけてくれる。私を先頭に扇状に走っていた形態は崩れ、私一人が空に舞う。例の戦場の上につく。私は上からしばし見つめ、ちょうどいいポイントを見つける。


 私は魔法を解き、そのまま急降下する。着地する地面に先に剣を突き立て戦場へと足を降ろした。

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