第2話 帰還。
ラッパの音と共に王族がに入場する。
皇帝のあいさつが終わると、ファーストダンスが始まる。各々、相手を誘うが私に寄ってくる人はいない。それもそうだろう。帝国でも最高の権力を握る公爵家の人間としての素質にかけると言われる私だから。まぁ、実際はそうでもないと自負している。噂の真意はともかくそう言われるのだから社交界ではそれが事実なのだ。
なんか食べようかな…
「あら、アーリアいたのね。」
お姉さまが他の御令嬢を集めてやってきた。明らかに多対一でもそれがいけない訳でもないので周りもガン無視だ。
「お姉さまと一緒に入ってきたのに今更ですか?」
私はにこやかに返す。
「ふん、ところでファーストダンスは踊らないの?あら、ごめんなさい。お相手がいないのね!?」
そこまで言うとまた笑いだす。心底呆れる。こんな目立ち方をして公爵家の品位を下げるのはどうかと思うし、幼稚だとさえ思う。
「それがどうかなさいましたか?」
「令嬢としての恥は無いの?良いのよ?我慢しなくて。」
「私が何を我慢しなければならないのですか?令嬢としての恥とは何でしょうか。お姉さまに言われると分からなくなりますね。それこそお姉さま?人としての恥はどうなさったのですか?」
私はそこまで言うとその場を離れる。
今日もこんなもんか。いつになったら成長するのか。
「屁理屈ばかり言って、心が曲がっているのね。」
…知らんがな。
**********
「うむ…」
先程の騒ぎの時、傍にいた一人が皇帝の傍にいる。何かを耳打ちして国王はそれに頷いている。少し、眉間にしわを寄せると私の方を見た…気がした。
…気のせいか。わっコレおいしそー!
私は先程のことを忘れてスイーツに食いついた。どれも可愛い。けれど、私は食べる気になれずグラスを持ち、壁によりかかった。
ご婦人たちの上辺だけ上品な笑いがそこらから漏れる。皆、綺麗に着飾っても偽り、騙し、隠し、そうやって権威や財をめぐって曲がったことをする。それが当然だと思う人も嫌いだし、そういったことを知らずに能々と生きている人も嫌いだ。この世界で清濁併せのんでみんなが幸せになれる道をどんなにか細かろうが見つけて、切り開いて行くことを選ばなければ自分も皆も嘘の中に溺れて生きてゆかなければならなくなる。だから私は嘘や虚栄で生きて行こうとは思わない。そんな小さなことをしなくても私には生きて行く力はある。貴族であろうが平民になろうが、私は平気だ。まぁ、周りのことを考えたら平民になったら平気ではないが。
ふと、今日の主役に目をやる。さっき挨拶も済ませたし、もう用はない。けれど、私と同じく人が寄り付かないからか気になる。少し眺めていると目が合ってしまった。
…ん?こっち来る…??
「どうか私と一曲踊ってくださりませんか?」
丁寧な言葉で私に頭を下げるその男性はこの国の第一皇子、シルヴェスター・ギル・エイジャー…この度の魔物討伐で活躍した英雄だ。今回の舞踏会は彼の帰還を祝ったものだった。
「私で良いのなら喜んで…」
私はおずおずと皇子の手を取った。
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