第12話

ダンジョンから出ると、外はもう夕方だった。

明らかに数時間でダンジョンをクリアした訳では無いので、丸一日ダンジョンに潜っていたのだろう。


お腹も空いたのでアイテムボックスからケルベロスの肉を出す。

魔物は解体すれば食べれるので食料になるのだ。


スライムは例外で核を破壊すると消滅するので食べようが無い。

昔、好奇心でスライムを状態異常にして食べた者がいたらしいが、それはもう酷いことになったらしい。


ダンジョンに来る前に集めておいた木と、マッチで火をつける。

そこに、ケルベロスの肉を焼く。


数分後、肉がいい具合に焼けた。

ケルベロスの肉は脂が多くて、凄く美味しいのだ。



肉を食べ終えた俺は寝ることにした。

【気配察知】常に発動しているのと、クロがいるのでここ辺りにいる魔物はよってすら来ないだろう。



目覚める。

昨夜は何もなかったようだ。

久しぶりの野宿で体が痛いが、まぁまだ若いので大丈夫だろう。

こんなこと考えるのが、年寄りっぽいが。


まぁ新しいクロも手に入れたことだし、次の街に行くことにしよう。

クロは俺の2倍ぐらいあるので余裕で俺を乗せることが出来る。


俺はクロの背中に乗る。

「クロ、行っていいぞ。」

クロを撫でながらそういうとクロは嬉しそうにはしりだす。


クロが走り出して数十分たった頃


「あれはなんだ?」

前方に馬車と外に人が出ているのがわかる。

よく見ると、ウルフの群れに襲われているようだ。


「クロ、スピードを上げてくれ。」

クロはそれを聞くと、元の2倍ぐらいのスピードで走り出した。


戦闘中の護衛らしき女の人に大きめな声で話しかける。

その人は魔術師っぽいので、時間が稼げなくて魔法が撃てないのだろう。

何故護衛に魔術師が一人なのだろうか。

気になる点はあるが、まぁ今は置いておこう。


「大丈夫ですか?助けはいりますか。」

「あ!お願いします!」

俺はその言葉を聞くと、クロに言った。

「クロ、こいつら抑えれるか」

「皆さん!耳を塞いでくださいね!」


クロは頷き大きな咆哮を出した。

それを聞いたウルフ達は戦意を失い、縮こまっている。

さすがウルフキングだ。

15体ぐらいのウルフが一斉に攻撃をやめたのだ。


それを見た俺はウルフ全員にヒュプノスをかけ、スキル強奪をかける。

ふと、横を見るとさっきまで戦闘していた女の人が唖然としながらこちらを見ているのがわかるか。

俺はクロにできるだけ最低限の傷で、ウルフ達を倒すことを命令した。


「あ、あなた何者?どうやってこの数のウルフを倒したの?」


「俺は通りすがりの冒険者です。まぁ倒し方は秘密で…それこそあなたは何をしていたのですか?」


「ああ、すみません私は商人のアルセリアと申します。ウルフの群れで馬が逃げてしまって、ウルフ達と戦うはめになってたんですよ。私は魔法しか使えないのでもうダメかと思ってました。」


「そうだったんですか。災難でしたね。じゃあ街までお送りしますよ。荷物は俺のアイテムボックスに収納してもいいですか?」


「あ、ありがとうございます!!見たところ商人じゃないようなのに、アイテムボックスをお持ちなんですね!全部入るなら入れてもらって大丈夫ですよ!」


それを聞いた俺は馬車の荷物をアイテムボックスにしまっていく。

「どちらに向かわれてるんですか?」

「私は今は王都に行く予定だったんですよ。大丈夫ですか?」

俺は元々王都には行く予定はなかったが、まぁいいだろう。

「大丈夫ですよ。じゃあ乗ってください。」


俺は先にクロに乗り、アルセリアさんに手を伸ばす。

少し怯えた様子だったが、さすが商人と言ったところだ。

勇気があるようだ。

すぐに乗ってきた。

「俺はカルムと言います。そしてこっちがクロです。」


「わかりましたカルムさん。見たところ意思の疎通ができているので大丈夫だと思いますが、王都に着いたら検問所で首輪を貰った方がいいですよ。それをつけていれば、ちゃんとした従魔扱いになるので。」


「そうなんですね。知りませんでした。ありがとうございます。」


「あ、カルムさん、これどうぞ。私のお店のお得意様の証です。命を助けていただいたのでこれぐらいは差し上げますよ。」


そう言って俺は金色の「アルゴ商会」と書かれたカードを渡された。

「え、アルゴ商会って、国の三大商会のひとつじゃないですか!私のお店って、アルセリアさんアルゴ商会の方なんですか!?でもなんで、そんな人が一人で馬車に?」


アルゴ商会は、国の三大商会のひとつと言われ、この国で相当な権力を持つと言われる商会だ。

このカードも、金、銀、銅というふうにわかれ、銅でも家の家宝レベルにすごいものなのだ。

そのぐらいの権力を持つアルゴ商会の会長のような人が一人で馬車に乗るなど普通はありえないのだ。


「ああ、すみません言ってなかったですね。今回は商人としてでは無く、アルセリアとして、馬車に乗ってたんですよ。王都にいる家族に会いに行くためだったので馬車の荷物も私の私物ですよ。」


それを聞いた俺は納得した。

商会が関係していないのなら一人でも大丈夫だと思ったのだろう。



その後、数泊の野宿を終え、やっとの事で、王都「カイミルス」に到着したのだった。

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クソスキル【睡眠不足】持ちの俺の人生は死んでから ごまる @GMR

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