第5話 散歩

おじいもとい、アズール様から人形をもらってから数日が経った。洋服を作りたくてたまらない私はおじいの仕事場にお邪魔して洋服を作りたいところだけど、マミーは一度も私を仕事場に連れてってはくれない、まぁ、赤ちゃんだから仕方ないけど...


「お嬢様、ルチアめが参りました。」


「あうっ!(おうよ!)」


「今日はいかがいたしましょう?」


「あうあうあーーー!(アズール様のところに連れていくがよいっ)」


「では今日は、お庭を散歩してみましょう。」


「うぅーー。あうあっ!(うーむ、それもよしっ!)」


「今日はいい天気なのでお庭の花が綺麗に見えますよ。」


「あうー。(それはたのしみねー)」


花は、特別好きってわけではないけど、デザインの参考にえっちゃんと一緒に植物園

に行ったりしたこともあったなー。えっちゃんは花をモチーフにしたワンピースのデザインを描くのが得意だった。白い生地のワンピースの裾に抽象的な花や葉の絵を描いて森ガール風に、全体をピンクの花でまとめたキュートなワンピース、袖の縁を花柄のレースで囲んだシンプルなワンピース。どれもすてきだった。今はもう見れないけれど...


ていうか、家の外に出るのこの世界に来てから初めてだわ。いったいこのおうちのどんな感じかな?私が今いる部屋は十畳ぐらいだと思うけど、これでも赤ちゃんの1人部屋としては広すぎるくらい。もし小さい家だったらどうしよう。wたく仕事気にこの部屋は有り余りますとか言ってみる?...でも、まだ赤ちゃん言葉しか喋れないしなぁ。


「お嬢様、着きましたよ。ここが、アーリヤス家自慢のお庭です。」


「あうーーー!(おおーー!)」


我が家のお庭はなんか、うん、なんか壮大だった。赤、白、黄色、ピンク、オレンジ。とにかくたくさんの色の花が咲きまくっていた。ついでにそこら中にいろんな色の球体が浮かんでいる。さすが異世界。


「あうあう!(きれいだね!)」


「本当に綺麗ですよね。ここは、御当主の奥様。お嬢様のお祖母様が生前愛したお庭なんです。私はお祖母様がお亡くなりになってからこの家にお仕えするようになったので詳しくは存じ上げませんが、お亡くなりになる前は毎日ここにいらっしゃって花の手入れをなさっていたそうです。花を誰よりも育てるのが上手でいらしたことから、その手は“精霊を呼ぶ手”と呼ばれていたそうです。」


「あうー。(へー)」


精霊を呼ぶ手って商物を育てるのがうまい人を緑の手みたいな感じかな。世界によって呼び方違うんだなー。あ、浮かんでる球体がこっち来た。おいでー、おいでー、痛いようにはしないよー。それっ!あれ?掴めない。不思議だわ。


「ルチアさん、今日はどうしなすったハロ?」


はろ?


「今日はお嬢様とお散歩です。」


「そうなんですハロ?おーこの子が!こんにちハロ。おらは庭師のデンタだハロ。お嬢様と会うのははじめてだすハロ。よろしくハロ。」


「メルティナお嬢様です。今日がお嬢さまにとっての初めてのお散歩なんです。」


「そうハロか。おーなんともかわいいやや子ハロね。いっぱいここで遊んでいくハロ。」


「あう!(おうよ!)」


「いい返事ハロ。では、ルチアさん、おらはいつものとこにおるハロ。何かあったらすぐに来るハロ。」


「はい。」


「じゃハロー、お嬢様。また会うハロー。」


「あうあー。(じゃハロー。)」


いやッ!じゃハロって何?!最近の流行か?!方言にしても独特すぎる。しかも、こんにちハロって何?!こんにちはこんにちは?一回でいいでしょ!


「お嬢様、あちらも見に行きましょう。」


「あうあうぅあー!(その前にあのハロを説明して!)」


「見てくださいお嬢様。」


「う?(何?)」


「この花は、スピリチュアル・フィオーレといいまして、別名“精霊の集う場所”と呼ばれています。お祖母様は生前この花を好まれたそうです。滅多に咲かない花で、お祖母様のお友達はわざわざこの花を見に遠い外国から来ていたそうですよ。」


「あうー。(ほー。)」


確かに滅多に咲かなそう。花弁は青とピンクのコントラストが綺麗で、花弁自体がガラスのように透き通っている。ん?花弁だけじゃなく葉っぱも茎も透き通っているみたい。光が当たるとより一層光沢が出て、この世のものじゃないみたいに感じる。しかもさっきの球体がほかの花を見ていた時よりもめちゃくちゃいる!何これ!幻想的だなー。えっちゃんにも見せてあげたいよ!


「メル~!ルチア~!ただいま~!!」!


あ、マミーだ。仕事から帰ってきたみたい。


「あうあー!(おかえりー!)」


「ちゃんとお利口さんにできてたかしら?今日はいつもより早く帰れたの。一緒におやつを食べましょ。」


「あうっ!?(え?マジ?もう普通の食事できんの?)」


「奥様、まだお嬢様は固形物は食べれません。」


「あら、気分よ、気分。メル、一緒に楽しみましょうね~。」


「あう。(ちぇ、まだお乳生活か。)」





でも、まぁおやつを見るだけでも楽しむとするか。




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お洋服を作りましょうっ! Lopp @Lopp

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