その館で起きたこと

りお

プロローグ

数奇な運命。

この言葉を聞いたことはあるだろうか。

運命のめぐり合わせが悪いこと。不運。などの意味で用いられる。

壮大なストーリーを語るつもりは毛頭ないが、これは私が関係したとある事件が、まさに数奇的であったように思う。

この話は、その事件を記録したものである。


N県にある山の中腹に、最近建てられたばかりの洋館。

この館で晩餐会が開かれる。

天候は猛吹雪。外は凍るように寒い。

そんな悪天候の中で開かれた晩餐会に、数名の招待客が参加した。

招待客は、推理小説家、T大学に通うミステリーサークル所属の学生、探偵、医者、S大学の研究室の助教授。

年齢や性格・職種ですら違い、一見共通点はないように見える。

彼らはこの館の女主人 白鷺 麗子(しらさぎ れいこ)が招待した客人達だ。

麗子は推理小説などのミステリーをとても好み、それに触れる時間が唯一の楽しみなのだという。

招かれた客人達の共通点は、ミステリー。

皆、推理をする事が好きなのだ。探偵は職業柄なんらかの事件や調査などを必要とする場面に良く出くわすことから、麗子からよく話を聞かれる。

当然守秘義務から全て応える事は出来ないが、それでも彼女は毎回楽しそうに聞いていた。

何度か個人的な話をすることもあったが、彼女は典型的な《お嬢様》なのだろう。

育ちがよく、大切に育てられたように見える。食事を共にした時などに金銭感覚が自分とはかけ離れていると感じた。

自分の身につけていたものが紛失してからかなり時間が経過してから無いことに気づく程度には、豊かなのは間違いない。

そもそも庶民にはメイドや執事を雇うほどの経済力など無いのだけれど…。

自分には無いものを持っている人を見ると、眩しく感じる。時に羨ましく妬むこともあるのだろうが、関係性によっては尊敬に変わるもの。

私にとっては愛というものに忠実に生きていた彼女が眩しく、自分には無い一面として尊敬している。…限度はあるけど。


そんな彼女と、もう二度と話をすることができないとは…。

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その館で起きたこと りお @rio0308

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