第11話 付記

 本短編の主人公メクリンは実在の人物である。ただし、ラシードゥッディーンの『集史』では、ムカイ・ハトンと書かれる。メクリン部族のムカイ・ハトンでは、少々ややこしいので、Mekrin/Bekrin<Mukri(n)<Mukaiと、モンゴル語にはないrが落ち、なまったものがアラビア文字で表記された結果、ムカイになったと、強引にこじつけた。

 チンギス・カンが巨乳好きという話には根拠がある。『元朝秘史』で、ケレイト王族の娘イバカ・ベキをウルウト族長ジェルチデイ伯父に下げ渡す時、チンギス・カンはイバカ・ベキに次のように言った。

「おまえを他の男に渡すのは、においが臭いとか、胸が小さいとか、そういう理由だからではない」

現代でもオードリー・ペップバーンの登場までは、豊満な体が魅力的だとされたし、特に遊牧社会では、太っている方が好まれたようだ。唐の玄宗が愛した楊貴妃も、他の妻妾から肥女、と呼ばれていた。唐朝を建てた李氏は武仙鎮の出自で、鮮卑拓跋の後裔であり、遊牧国家の特徴や思考を濃厚に持っていた。

 最後に、読了していただき、本当にありがとうございました。

令和2年12月

雪の函館にて

筆者識

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世界征服者の寵姫 土屋和成 @tsuchiyakazunari

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